カリガネソウは『雁草/雁金草』と書き、花の姿を雁の仲間、カリガネが飛ぶ姿に見立てたものと言われています。知人に案内をする時は、必ず葉を揉んで匂いをかぐように勧めます。知人達は一様に顔をしかめて「凄い匂いですね!」と一言。この臭気は虫などの食害から身を守る為だと思われます。
カリガネソウの花びらは細い茎の先にスプーン状になって付き、向かい合って弧を描くようにしべが付いています。この花に訪れるのは大きなクマバチ。花びらにはいかにもクマバチがちょうど乗れそうなくぼみがあり、ゆっくり腰を据えて蜜を吸えそうな形。ところが花に体を乗せると細い茎はクマバチの重みで、ガクッと花の首を傾げます。真っ逆様にころげ落ちそうになったクマバチは、あわてて花にしがみつきます。このとき、毛に覆われた背中に雄しべの花粉が雌しべにくっつき、みごと受粉となるのです。臭気で我が身を常に守り、開花期には細い茎でクマバチをわざと不安定にさせ、受粉に導くとは、なにやら策略家めいた植物ですよね。
一方クマバチも利用されてばかりではありません。花の付け根に強引に、その尖った口を突き刺し花の蜜を盗みます。これでは花粉はつきませんし、花は傷んでしまうので、カリガネソウにとっては大損。策略家と強者の勝負、どちらもなかなかやるものです。
名前の由来となった野鳥のカリガネも、今では準絶滅危惧種になるほど少なくなり、カリガネソウも千葉県レッドデータブックではランクC「要保護生物」に指定されるほど。どこかで見かけることが出来たら、じっくりとこの花を観察してみてください。そしてクマバチとの関係を築きあげた、気の遠くなるような進化の歴史を考えてみましょう。もちろん、葉を揉んで匂いをかいでみるのもお忘れなく。
ナチュラリストネット/森 将憲
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