平和について学び、ともに考える機会を~市原平和フェスティバル実行委員会~【市原市】

【写真】うたと語り「今、この町でこの歌を」

 

 毎年、夏に開催される『市原平和フェスティバル』。平和への祈りとメッセージが込められたオリジナル台本・市民手作りの『うたと語りの構成劇』やプロアーティストのコンサート、映画上映、講演会、体験者の語り、写真展など、様々なプログラムが用意されている。今年は9月29日に行われ、会場の『いちはら子ども未来館』には約200名が訪れた。実行委員会メンバーの安食さんは「私たちは、毎年の企画を創っていくために、いろいろな方に声をかけながら集まります。代表は置かず、毎回、皆で企画内容を検討する形で進めています。始めた当時、これほど続くとは誰も思っていませんでしたね」と笑顔で話す。

過去の戦争、現代の平和

2019年のパネル展示の様子

 市原平和フェスティバルは、当初『市原平和展』の名で1993年(平成5年)、市原市市制30周年記念の協賛行事として開催された。「千葉や船橋などでは平和に関するイベントがあったので、市原でもやろうという話になりました。テーマは『15年戦争』。上映する映画を選ぶにも色々考えるのが楽しくて。今もそれは同じです」と安食さん。『15年戦争』は満州事変から日中戦争、太平洋戦争を経て日本が降伏するまで、足かけ15年、日本が行っていた戦争のこと。市原市市民会館の大ホールで、実話を元に特攻隊員の戦後を描いた映画『月光の夏』を上映し、パネルや戦時中の物品を展示、戦争体験者の話を聞いた。2日間のイベントは大好評で、翌年も実施することになった。

 メンバーの高崎さんは、「当時、15年戦争における日本の加害者としての側面は、あまり知られていませんでしたので、知ることが必要と思いました。それと、どうして当時の国民は戦争へと突き進んだのか、どんな状況で、何が起こって、実態はどうだったのか。私たちが二度と巻き込まれ、加担者にならないために、何を考え、何をしたらいいのか。それを参加者と一緒に学ぼうというコンセプトで、毎年開催するようになりました」と話す。

 やがて、内容は徐々に、現代の問題や課題を取り上げるように変わり、日本を含めた世界の状況をふまえ、毎回話し合ってテーマを決めていった。2000年頃から、各市民団体に呼びかけて、様々な展示やプログラムも行うようになり、名称も『市原平和フェスティバル』に変更した。

問題を見つけ出す

今年の布施祐仁さんの講演

 実行委員会では、フェステイバルの運営以外でも、様々な勉強会を開催してきた。15年戦争の連続講座を行い、その内容を本にまとめて作製。講演会、映画会のほか、フィールドワークとして体験を聞いたり、自衛隊基地の見学なども実施した。広く参加者を募ったイベントもある。メンバーの石塚さんは、「構成劇のテーマ決めは、毎年産みの苦しみです。現在は国際情勢も複雑で、問題も課題もとても多い。その中で何が重要か見つけ出すというか、感じ取るというか。イベントが終わるとすぐ次の準備に入り、テーマ・企画決め、台本創りに半年以上かけます」と話す。

 現代の問題に加え、核兵器や原爆、憲法も取り上げる。市原市民の平和を願う絵手紙や、短歌、俳句、川柳などの作品展、メンバーも出演する『歌と語りの構成』などもある。毎年、内容もプログラムも変えているが、今年は講演会と映画を主に、日本の防衛の現状に焦点を当てた。「9月開催になったことが良い意味で関係しました。今年8月まで一般上映していたドキュメンタリー映画『戦雲(いくさふむ)』が、9月から自主上映OKになったこと、さらにジャーナリストの布施祐仁さんに、周囲の国々が抱える火種など、ややこしい日本の安全保障の現状を、わかりやすく解説してくださる講演をお願いしたこと。講演を聞いて映画を見たら、実際に沖縄・南西諸島で日米政府が何のために何をしているか、すごく良く分かったというアンケートもありました」と石塚さん。参加者からは「現実を改めて知った」「戦争を想定した島外避難などの問題があることがよく分かった」「これまで参加してきたが、今年が一番良かった」という感想が寄せられたという。

 アンケートをまとめたメンバーの吉田さんは「講演と映画の前には、文化集団『このゆびとまれ』プロデュースによる『歌と語りの構成』を行いました。これは人の強さ、優しさ、平和の尊さなどをテーマにしたもの。こちらも好評で、一緒に歌いたかった、と言われました。やはり平和を表現するにも、実感するにも、音楽や劇などは大切ですね」と語る。そして「これからは若い世代に知ってもらうことが大事」とメンバー全員が口を揃えた。「そのために一緒に学び、考えてくださる方に、ひとりでも多く参加して欲しい」と言う。来年の企画構想はこれから始まる。興味のある方はぜひ問合せを。

 

問合せ:市原平和フェスティバル実行委員会

mail:ichihara.peace@gmail.com

 

『この記事のご感想をお聞かせください』


男性女性


10代20代30代40代50代60代以上


とてもよかったよかったどちらでもないよくなかったとてもよくなかった


毎週読んでいる月に2回ほど読んでいる月に1回ほど読んでいるあまり読んでいない

関連記事

今週の地域情報紙シティライフ


今週のシティライフ掲載記事

  1. 【写真】講演する家田さん      昨年12月、市原市市民会館で開催された『令和6年度市原市人権・男女共同参画フォーラム』。男…
  2. 【写真】はにわ博物館展示室の姫塚埴輪        昨年8月、千葉県殿塚古墳・姫塚古墳出土埴輪(総数48点うち殿塚古墳30点、…
  3. 【写真】第1回ドリームコンサートにて。2部では会場とステージが一体に &…
  4.  明けましておめでとうございます。2005年5月に「こでまりの夢」のコラムが始まって今年で20年になります。今回は第1回で掲載しました『か…
  5.  正月飾りの縁起物に赤い実のカラタチバナがある。これを探して冬の里山を散策した。数は少ないが一株見つかると近くに数株見つかった。11月頃か…
  6. 【写真】西本さん。大谷家具ギャラリー工芸館にて、展示作品と      大分県別府市在住の竹細工職人・西本有(たもつ)さんは、市…
  7.  富山県富山市。標高3000メートル級の北アルプス立山連峰や水深1000メートルの富山湾に囲まれ、人口約40万人の北陸地方を代表する主要都…
  8.  エイサーは沖縄全島と鹿児島県奄美大島に伝わる伝統芸能の一つ。旧盆の時期に祖先の霊を迎え、送り出すための演舞で太鼓や獅子なども使いながら踊…
  9. シティライフ編集室では、公式Instagramを開設しています。 千葉県内、市原、茂原、東金、長生、夷隅等、中房総エリアを中心に長年地域に…

ピックアップ記事

  1. 【写真】講演する家田さん      昨年12月、市原市市民会館で開催された『令和6年度市原市人権・男女共同参画フォーラム』。男…

スタッフブログ

ページ上部へ戻る