暮らしを彩る手仕事の逸品~別府竹細工・有製咲処 西本有さん~【市原市】【長南町】

【写真】西本さん。大谷家具ギャラリー工芸館にて、展示作品と

   

 大分県別府市在住の竹細工職人・西本有(たもつ)さんは、市原市の出身。別府を拠点に『有製咲処(たもつせいさくしょ)』を主宰し、竹製のバッグやかごなどの実用品や、壁飾りやランプシェードなどのアート作品を製作・販売している。企業向けの装飾も多く手掛け、2013年にはJR九州クルーズトレイン『ななつ星in九州』の客室備品の屑籠を製作した。昨年11月には長南町の『大谷家具ギャラリー工芸館』にて、『別府竹細工 有製咲処展』が開催され、故郷の千葉では10年ぶり2度目の個展となった。

現代と調和する竹細工

 別府竹細工の起源は『日本書紀』に記されている。第12代景行天皇が、大和朝廷に反抗した九州熊襲(くまそ)征伐の帰りに立ち寄った別府で、従者が良質な竹を大量に発見し、茶碗かごを作ったことが始まりとされる。江戸時代、日本有数の温泉地として訪れる湯治客が竹製のかごやざるを土産物として全国各地に持ち帰り、竹細工が別府の産業として発展した。1979年には、国の『伝統的工芸品』に指定されている。

 西本さんは大学卒業後、電子機器メーカ―の営業として都内で勤務し、3年目に福岡へ転勤。千葉で生まれ育ち、九州には馴染みの無かった西本さんだが、いざ暮らしてみると福岡の生活は楽しく、九州各地を旅してまわった。その時に別府市にある竹工芸の訓練校を知り、その存在はその後、頭の片隅にずっと残ることになる。6年の福岡勤務を終え、帰京して会社員生活を過ごすも、九州を懐かしむ思いがつのり移住を決意。会社を退職し、『大分県立竹工芸訓練・支援センター』に入学したのは2007年、38才の時のことだった。

 訓練校を卒業した2009年、屋号を『有製咲処』とする。西本さんは「竹の学校を出ると、竹とか工房とかいう言葉を使う場合が多いんですが、自分が作るものと、他の人のものと、竹とは別の分野のものも扱いたい。そして、ただの製作所ではおもしろくないので『製咲処』としました。後付けで『花開く』なんていう意味も」と説明する。2010年には福岡市中央区に直営店『かご屋』をオープンした。

 有製咲処の主力商品は、革持ち手の竹かごバッグ『bamluxe(バンリュクス)』シリーズ。和装・洋装、男女を問わず、1年を通して使えるとして人気が高い。白竹の色は象牙色と呼ばれ、使い込むごとに色の深みを増す。シリーズ最上級タイプの『superior(スーペリア)』は受注生産品で、持ち手とフタの革の色が数種から選べる。内側に張られた帆布はポケット付き、A4サイズの書類も入るので機能的だ。「竹工芸といっても同じものを作っているばかりではなく、伝統を尊重しつつ再解釈して、現代の生活に合わせたモダンなものに仕上げたい」と語る西本さん。竹かごバッグはオリジナル商品として、自分らしさが出ている品だと自負する。その他、長財布と名刺入れは、東京両国の革製品メーカーとのコラボ製品。別府竹細工の伝統的な『編組(へんそ)』の『花六つ目』をあしらっている。さらに様々なデザインのざるやかごは、実用品としてもインテリアとしても用途は自在。口当たりの滑らかなスプーンや、「麺類の食べやすさはこれが一番」という箸などもある。

 

竹かごバッグ『bamluxesuperior(バンリュクス・スーペリア)』【db】
長財布と名刺入れ『花六つ目』

   

アートの世界へ

『別府竹細工 有製咲処展』を開催した大谷家具ギャラリー店長の大谷悦子さんは、全国にアンテナを張り日本各地の工芸品をギャラリーで紹介している。「竹のバッグを初めて見て、素敵だなと。千葉にゆかりの方ということもあり、お声を掛けさせていただきました。西本さんは、生活に密着したバッグや日常使いできる小物を作っているのが魅力的です。海外からの品も多い中、日本人の作るクオリティーの高いものを見ていただきたいと思っています」と話す。展示会は初日からたくさんの人でにぎわった。来場者は1つ1つの作品を愛でながら、在廊中の西本さんや大谷さんとの歓談に花が咲いた。ざるを買い求めた女性は「昔ながらの手仕事の製品は手に入りにくいので、楽しみにして来ました。お料理や盛りかごとして使いたい」とうれしそうに話した。夫婦で訪れた男性は「細工がすごくて驚いちゃったよ」と丹精に編み込まれた編目に見入っていた。
 西本さんの作品は、日本各地で空間を演出するアートとしても存在感を示している。ホテルのロビーを飾るオブジェ、銀行オフィスの壁掛け装飾、駅の空間を引き立てるランプシェードなどだ。2009年から国際芸術祭が開催されている別府は、住居とアトリエを構え移住してくる若いアーティストたちも多く、西本さんは彼らとの交流に刺激をもらっているという。竹細工職人、デザイナー、空間プロデューサーと幅広い活躍を続けるなかで、「将来は絵画や彫刻のように美術館に飾られるようなアートの世界に身を置きたい」と、さらに遠くを見据えている。有製咲処の製品はウェブショップで購入可能。問合せはウェブショップサイトの『CONTACT』から、またはメールで。

   

問合せ:有製咲処 西本さん
メール:tamotsuyaki@yahoo.co.jp
・ウェブショップ:https://kagoya.thebase.in/

   

店舗装飾・竹球体オブジェ
JR九州『ななつ星in九州』屑籠

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