共に暮らし、若者たちは生きていく力を身につける

 児童自立支援施設や少年院から出所したものの、貧困などの理由から居場所のない若者は大勢いる。「ここで生活したい」意志のある平成生まれの若者なら誰でも受け入れてくれる家が大網白里市駒込にある。運営は『(一社)NOCA(ノカ)』。代表の川北ありさんと立野(たちの)美香さん、4人の若者とで昨年の11月に千葉市から移転、築約50年の平屋建て3棟の掃除と草刈りから始めた。
 「お世話や管理はしません。暴力、喫煙と飲酒を禁じるなど基本的なルール以外は、自分たちで規則も決めていきます」と立野さん。はじめにみんなで話し合って決めた家賃は1人当たり月15000円。毎月千円ずつ値上がりしていく。「居心地の良すぎる場所を目指してはいません。トイレも汲み取り式ですし。生きていく力をつけるための場所ですから」と明るく笑う。
 家賃や食費を稼ぐためにアルバイトをし、当番制でご飯を作る。月2回の夜会や毎日の朝礼、夕礼を繰り返し、時にはケンカもしながらひとつ屋根の下で暮らす。仕事がないときには、地域住民のための便利屋『まちのて』として掃除やイベントの手伝いをする。食費が賄えず、食べられる野草を採取し天ぷらにして食べたことも。そして自活できると自分で判断したら、自分の意志で出て行く。
 昨年4月の発足以来、約30人を世に送り出した。「がんばってくるね」と元気よく出て行くが出戻りを繰り返す若者もいる。最後のひとりが5月に出て行き、現在はここで生活する者はいない。が、立野さんの携帯には若者たちからの電話が3日に1度はかかってくる。他愛のないことだったり悩み相談だったり。信頼できる大人の存在は彼らにとって大きい。
 児童自立支援施設で過ごしたことのある川北さん、立野さん、そのほか多くの仲間とともに場を生み育ててきた。少年院や児童相談所などを介してやってくる人が多く「来たばかりの若者は、まず大人を信頼しないし表情は死んでいる。それがここで1週間、仲間とともに暮らすだけで明るい表情に変わっていくんです」とにこやかに話す。
 2人の活動はまだ模索中。仕事が長続きしない若者のため、立野さんも一緒に同じ職場でアルバイトとして働いたことも。理解ある雇用主に巡り会い、後輩にも次々と就職先を紹介し自らは海外で働くという夢に向かって進んでいる人もいる。
 「人と関わる力、諦めない力、それが生きる力になる。失敗しながら、ありのままの自分を活かせる道を選んでいってほしい」
 最低限の食器と料理本が並ぶ共同部屋。寝室として使っている離れには少しの漫画と学習参考書。入り口では川北さん手作りの木彫りのお地蔵さんが微笑んでいる。「自分で生きる力をつけたい」若者のため、いつでも門戸は開かれている。

問合せ 立野さん
TEL 070・6541・2167

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