
フジの蔓は下から左に巻き上がる
若葉に輝いていた森が青々してくると、そろそろ紫色のフジが見られるようになる。ひっそりと隠れるかのようにしていた野性のフジが一斉に咲きだす眺めは壮大だ。
大きいものは1メートルも垂れ下がるという総状花序は上から順に花開く。高い木に絡みつき、張り出した枝先から見えるのはほんの一部分。木の陰に隠れたところにもたくさん垂れ下がっている。
フジ(藤:別名ノダフジ)はマメ科の木本でマメ亜科フジ属。花は長さ2センチほどの蝶形花。蜜のありかを教える蜜標という黄色のマークがある。虫たちをおびきよせ、受粉の手伝いをさせる虫媒花。花の近くに寄れば、ブンブン飛び回る羽音が聞こえる。やがてソラマメのサヤを平たくしたような豆果がぶら下がる。
西日本には総状花序が20センチのヤマフジ(山藤:別名ノフジ)がある。よく似るが、簡単な見分け方は蔓の巻き上がり方。下から左に巻き上がるのがフジで、右に巻き上がるのがヤマフジ。例えばねじの場合、尖った方を上に太い方を下にすると、溝は下から右に巻き上がる。紅葉が始まる頃、フジのサヤの下を歩くと上の方でパチとかパキという音が聞こえることがある。サヤが爆ぜて種子を飛ばす音だ。
フジは藤〇、〇藤など苗字や地名に付けられるほど古くから親しまれている。遠くの山に当たり前のようにフジの花が見られるのは、市原の自然が万葉の昔から豊かな証。大切にしていきたい。
ナチュラリストネット/野坂伸一郎
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