ふるさとビジター館

旅立つモクズガニ

 秋になるとモクズガニは、繁殖と産卵のために川を下り、海を目差します。モクズガニは、国内の淡水に生息するカニでは最大級。全国の河川の淡水域などに生息し、甲羅の大きさは約5~8センチ、円形に近く緑がかった褐色です。一番の特徴は、ハサミに密生して生える柔らかい褐色の毛。この毛が藻屑のようであることから、名が付けられたと言われています。
 カニ類は、卵→ゾエア幼生→メガロパ幼生→稚ガニと変態する成長過程があり、モクズガニは、卵から稚ガニに成長するまで海や河口域で過ごし、その後、春から夏にかけて川を上り、数年後に海へ下ります。このように、一生のうちに川と海を行き来することを「通し回遊」と言います。わざわざ住み慣れた場所を離れ、長い時間をかけて繁殖のために海へ行く理由としては、卵や幼生が塩分濃度のある海などでないと発育できないからであると言われています。また、一説には生息範囲を広げることで、種を保存するためとも言われています。
 モクズガニは、中華料理で有名な上海蟹の近縁種、昔から全国で食用とされていますが、産卵や幼生の生育場所となる干潟の減少や棲みかとなる川岸や水路のコンクリート護岸化などにより、近年その数は全国的に減少傾向にあるようです。千葉県レッドデータブックでは一般保護生物Dに指定されています。市内では養老川や椎津川などに生息していますが、普段は巧みに周りの環境に溶け込んでいることから、中々お目にかかることができません。
 モクズガニのように川と海を行き来する生物を守っていくためには、行き来できる連続性のある環境の保全や修復が必要です。まずは私たちが川や海から離れた心を取り戻すことが大事です。

ナチュラリストネット/時田 良洋


Warning: Attempt to read property "show_author" on bool in /home/clshop/cl-shop.com/public_html/wp-content/themes/opinion_190122/single.php on line 84

関連記事

今週の地域情報紙シティライフ


今週のシティライフ掲載記事

  1.  昭和を代表するスター「石原裕次郎」は今年、生誕90年。映画やドラマで大活躍し、歌手としてもヒット曲多数。誰からも愛された「裕ちゃん」の魅…
  2.  鉄道写真愛好家の皆さんへお知らせです。今年6月5日(木)~6月10日(火)に開催予定の『小湊鐵道を撮る仲間たち展』に写真を出展いただける…
  3.  今年は小湊鐵道開業100周年。これを記念し、アートによる地域づくりの拠点である市原湖畔美術館は、小湊鐵道とコラボプロジェクトを進行中。小…
  4.  成田山公園で毎年行われる冬のイベント「成田の梅まつり」。会場は成田山新勝寺大本堂の奥、16万5000平方メートルもの広大な公園。四季折々…
  5. 【写真】パキスタン・カラチの整備途中の農場で、働く青年たちと田中さん(前列右端)      36年間の市議会議員のあと、パキス…
  6.     ◆一席 記念日を遅れて祝い根にもたれ  一宮町 黒猫胡桃     ・老プランあまく見積り火の車  茂原市 道譯賢…
  7. 当ホームページは、2/17に新ホームページのオープン予定のため、情報掲載が1/31までとなります。 2/17までに開催するイベント等…
  8. 【写真】講演する家田さん      昨年12月、市原市市民会館で開催された『令和6年度市原市人権・男女共同参画フォーラム』。男…
  9. 【写真】はにわ博物館展示室の姫塚埴輪        昨年8月、千葉県殿塚古墳・姫塚古墳出土埴輪(総数48点うち殿塚古墳30点、…
  10. シティライフ編集室では、公式Instagramを開設しています。 千葉県内、市原、茂原、東金、長生、夷隅等、中房総エリアを中心に長年地域に…

ピックアップ記事

  1. 【写真】パキスタン・カラチの整備途中の農場で、働く青年たちと田中さん(前列右端)      36年間の市議会議員のあと、パキス…

スタッフブログ

ページ上部へ戻る