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ふるさとビジター館
- 2015/9/11
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世代交代を繰り返し 北上するトンボ!! ウスバキトンボ
開放的な湿地や水田の上、群れをなしてほぼ休みなく、比較的速い速度で飛翔する薄いオレンジ色のトンボがいる。アカトンボの仲間、ウスバキトンボである。後羽の基部が薄いオレンジ色であることから、「薄羽黄」が名前の由来であるとされる。日本全国で見られ、世界的にも広く分布する。
特徴は、著しく早い成長と移動力、繁殖力であろう。成虫は夏から秋にかけて見られるが、他の多くのトンボ同様、冬前に死滅する。越冬するヤゴ(トンボ幼虫)だが、ウスバキトンボのヤゴは、文献によると、水温が7度以上でないと生息できないとされる。すなわち、本州では冬を越せない。では、どのように分布を広げているのであろうか?
台湾や先島諸島といった冬でも比較的暖かい地域で羽化した一部が、気温の上昇とともに北へ飛来する。一気に長距離を移動するのではなく、交尾、産卵、羽化と何度も世代交代をしながらの移動である。文献によると、産卵から羽化まで30日前後、羽化後1週間ほどで交尾、すなわち約1カ月半で世代を繰り返す。その結果、お盆以降はおびただしい数となり、本州のあちこちで群飛する姿が見られる。しかし前述したように寒さに弱く、12月になると幼虫も含めピタッといなくなる。これまでの調査で、南方に戻るという行動は確認されていないようである。正に、北方への片道切符である。
ウスバキトンボは、古くから日本人に親しまれ、お盆以降、多く群れ飛ぶ姿が見られることから、信心深い昔の人は「精霊(ショウリョウ)トンボ」や「ホトケトンボ」と呼び、「ご先祖様の霊がトンボに乗って里帰りされた」と大切に迎え、採ったりいじめたりすることを戒めてきたと言われる。生き物を大切に慈しみながら自然と共生してきた日本人独特の感性を、大切に継承していきたいものである。
(ナチュラリストネット/岡嘉弘)
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