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全国から来る見学客と駅で交流
- 2018/8/17
- シティライフ掲載記事, 市原版

国の登録有形文化財にも指定されている大正時代に建てられた古い駅舎。待ち合いスペースとホームへの出入り口がある駅員室を仕切った、壁の一部と切符売場の窓口だけが新しくなっている。
小湊鐵道月崎駅は、長いこと無人駅だったが、今年3月1日、月崎在住のOB3名が駅員に任命された。名誉駅長・鈴木務さん(87)、名誉駅務員・髙山哲彌さん(76)、田村孝之さん(70)。月崎駅は、国際的にも注目されている地磁気逆転地層『チバニアン(千葉時代)』の最寄り駅でもある。地層のある田淵が国際学会の定める国際標準模式地候補に残ったことで、昨年から全国の脚光を浴び、見学者により乗降者数が一気に増えた。人気の特別列車・里山トロッコも停車し、土日を基本に、観光案内役と駅の管理を鈴木さんたちが担っている。
「最寄り駅と言っても、地層までは徒歩で30分かかります」と駅務員の田村さん。小湊鐵道ではバス整備士を勤め、定年後は月崎駅敷地内にあるアート作品『森ラジオステーション×森遊会』を管理する『森遊会』代表として、森ラジオを訪れる人たちの案内や建物周辺の手入れをするために、月崎駅によく来ていた。
「全国的に有名になる前から、地層ファンの人たちが来ていました。それで駅前で道案内をしたりね」。同じく駅務員の高山さんは「月崎駅は駐車場が広く、オートバイのツーリングの待ち合わせや休憩で若い人たちもよく来ます。あとはトロッコ乗車体験のバスツアーで、団体の方たちが月崎駅から乗ったり。ホントに日本全国から来られますよ」と話す。高山さんは運転士として、定年までこの里山のレールの上を走り、乗客の安全を第一に考えてきたという。「小湊鐵道は四季折々の自然が楽しめます。特に春は人気ですね。私たちもどの桜が早く咲くのか、タンポポが群生している場所だとか、運転しながら見ていました」
駅長の鈴木さんは、現在の養老渓谷駅が朝生原駅だった時に小湊鉄道に入社。上総山田駅、養老渓谷駅、五井駅などの駅長を歴任し、定年の5年後、嘱託で上総山田駅の駅務員となり、約8年半勤めた。「山田駅は少年院の最寄り駅で、院の子どもたちが月1回、駅の掃除に来るんです。とても丁寧にやってくれて、声をかけると素直に返事をする。1日も早く更生して欲しいと思ってました」。どんな日でも制服を来て駅長帽をかぶると、気持ちも体もシャキッとする。「また駅に来て、多くの方とお話ができる。こんなに嬉しいことはないですね」
偶然にも、声をかけた人が遠縁だったと分かったり、50年ぶりに高校の同級生と会ったりして、驚くこともあるという皆さん。「帰るお客様からも声をかけていただいて列車が来るまで盛り上がったり。お互いに元気をいただいている感じです」。常に心がけているのは「来てくれる方たちに感謝の気持ちを伝える」こと。多くの人たちとの交流を楽しみながら、鈴木さんたちは笑顔で列車を出迎えている。