障がい者とその家族とともに楽しむクラシック音楽~第3回ドリームコンサート・2月8日開催/ドリームオーケストラ~【市原市】

【写真】第1回ドリームコンサートにて。2部では会場とステージが一体に

         

「障がい者でも、小さな子どもでも、安心して足を運べるコンサートを開きたい」。その目的のために結成されたオーケストラが『ドリームオーケストラ』だ。2月8日には、市原市市民会館大ホールにて『第3回ドリームコンサート』が開催される。代表の大野正憲さんは、「知的障がい者は同じ場所にじっとしていられなかったり、声を上げてしまったりすることがあるので、コンサートに来ることを遠慮してしまいます。そういう方々やご家族の皆さんにぜひ音楽の楽しさを体感していただきたいと思っています」と話している。

誰にでも音楽の楽しさを

 ドリームオーケストラ旗振り役の大野正憲さんは、バイオリンの担当。大学の学生オーケストラでバイオリンを始め、社会人になってからは40才で演奏活動を再開した。1992年に発足した市民オーケストラ『市原フィルハーモニー管弦楽団』の初期メンバーとして、郵便局勤務の傍ら、これまで30年以上演奏を続けてきた。「ドリームオーケストラを作りたい」と思ったのは55才の頃のこと。昼食に通っていた食堂の経営者・篠﨑有紀さんには、知的障がいがある長男・拓也さんと長女・茉衣さんがいた。「茉衣ちゃんはよく小上がりに座ってニコニコと1人でおしゃべりをしていました。お母さんが『演奏会にはなかなか行けない』と話していたので、『じゃあ、行けるコンサートを作ればいいじゃないか』と思ったんです」。
 その後8年程あたため続けた思いが、2016年に実を結ぶ。60才の定年を境に勤務に余裕のできた大野さんは、市原フィルや他の音楽仲間に声を掛け、第1回ドリームコンサート開催にこぎつけた。会場にはチラシに大野さんの名前を見つけた篠﨑さん親子も駆けつけていた。「ステージの大野さんを見て、夢が叶ったんだな、本当にやったんだと感動していました」と篠﨑さん。大野さんは「客席にいる篠﨑さんの目に涙が浮かんでいるのが見えた」と振り返る。2018年開催の第2回ドリームコンサートでは、障がい者が観客としてだけでなく、出演者として合唱に挑戦した。演目はエルガー『行進曲 威風堂々第1番(合唱付き)』。そのステージには篠﨑拓也さんと茉衣さん兄妹の姿もあった。

        

合唱チームメンバーと大野さん

会場とステージが一体に

 今年の第3回ドリームコンサートは、コロナ禍を経て6年ぶりの開催。1部は多くの人に耳馴染みのあるクラシック曲が並ぶ。合唱はシベリウス『フィンランディア(合唱付き)』で、障がい者合唱チームは5名で結成された。鶴岡瑞木さんは初参加。佐久間もみじさん、深山奈緒子さん、篠﨑拓也さん、茉衣さんは第2回から続けての参加だ。深山さんは第2回のコンサート出演後、DVDを何度も繰り返し観ていたそうだ。5名の合唱練習は11月にスタートした。ドリームオーケストラでビオラ担当の吉田祐子さんは合唱指導のスタッフとして参加。「大野さんが一生懸命やっているのでお手伝いしたい」と話す。練習ではキーボードで伴奏しながら「歌詞はラララでもいいよ」とメンバーに声をかけていた。大野さんは、「メンバーは声を出すことや、じっとそこにいることが大変。それでも歌うことが好き。きをつけをして歌えなくてもいい。でも、何でもいいわけではなく、楽しく歌うためにちゃんとした練習をする。その先に舞台での楽しみがある」と共演者としてやさしい眼差しを向ける。『障がいがあっても出来る事に夢を乗せて』が合言葉だ。本番では『市原混声合唱団』や市民有志が共にステージに上がる。コンサート2部はポップスやアニメソングなどのラインナップで、歌ったり、踊ったり、ペットボトルで作ったマラカスでリズムを奏でたりと、会場とステージが一体となる。合唱指導でチェロ担当の近藤晶子さんは、「ハプニング大歓迎。楽器が珍しいなと思ったら、ステージに上がって見に来てくれて構わないんです」とにこやかに話す。
 今回からコンサートの運営に障がい者側の演奏会実行委員会のスタッフが加わり、広報活動や支援金募集など積極的な協力をしている。300個のマラカスも障がい者とその家族が製作する。当日はロビーにて福祉作業所などの模擬店と、活動資金に充てるためドリームオーケストラのフリーマーケットが行われる。会場では1口500円の支援金を募る。「ドリームコンサートでは、こんなにも皆さんが音楽が好きで求めているのかと心を打たれます。通常のコンサートだと観客に拍手をいただいて終わりですが、ドリームコンサートは会場と舞台が手を振りあって終わる。お互いの楽しさが手に取るように伝わるんです。どなたでもぜひお越しください」と大野さん。詳しくは問合せを。

            

第3回ドリームオーケストラのメンバー

         

●第3回ドリームコンサート
2月8日(土)市原市市民会館 大ホール
13時開場 14時開演 入場無料
問合せ:ドリームコンサート事務局 大野さん
Tel.090・8640・6014

          

関連記事

今週の地域情報紙シティライフ


今週のシティライフ掲載記事

  1. 当ホームページは、2/17に新ホームページのオープン予定のため、情報掲載が1/31までとなります。 2/17までに開催するイベント等…
  2.  昭和を代表するスター「石原裕次郎」は今年、生誕90年。映画やドラマで大活躍し、歌手としてもヒット曲多数。誰からも愛された「裕ちゃん」の魅…
  3.  鉄道写真愛好家の皆さんへお知らせです。今年6月5日(木)~6月10日(火)に開催予定の『小湊鐵道を撮る仲間たち展』に写真を出展いただける…
  4.  今年は小湊鐵道開業100周年。これを記念し、アートによる地域づくりの拠点である市原湖畔美術館は、小湊鐵道とコラボプロジェクトを進行中。小…
  5.  成田山公園で毎年行われる冬のイベント「成田の梅まつり」。会場は成田山新勝寺大本堂の奥、16万5000平方メートルもの広大な公園。四季折々…
  6. 【写真】パキスタン・カラチの整備途中の農場で、働く青年たちと田中さん(前列右端)      36年間の市議会議員のあと、パキス…
  7.     ◆一席 記念日を遅れて祝い根にもたれ  一宮町 黒猫胡桃     ・老プランあまく見積り火の車  茂原市 道譯賢…
  8. 【写真】講演する家田さん      昨年12月、市原市市民会館で開催された『令和6年度市原市人権・男女共同参画フォーラム』。男…
  9. 【写真】はにわ博物館展示室の姫塚埴輪        昨年8月、千葉県殿塚古墳・姫塚古墳出土埴輪(総数48点うち殿塚古墳30点、…
  10. シティライフ編集室では、公式Instagramを開設しています。 千葉県内、市原、茂原、東金、長生、夷隅等、中房総エリアを中心に長年地域に…

ピックアップ記事

  1. 当ホームページは、2/17に新ホームページのオープン予定のため、情報掲載が1/31までとなります。 2/17までに開催するイベント等…

スタッフブログ

ページ上部へ戻る