裂織工房『猫の夢』で甦る布小物
- 2013/3/22
- 外房版

裂織工房『猫の夢』で甦る布小物
不要になった着物や布などを細かく裂いてテープ状にしたものを横糸にして折り込んだ裂織。日本では江戸時代から行われ、海外でも同様の織りがあり、万国共通の庶民の知恵から生まれたといわれている。服や小物は買うのが当たり前となった現在、資源の再利用、エコロジーな織物と静かなブームとなっている。古布の柔らかな風合いも魅力だという。
そんな裂き織りに魅了され自宅に工房を設け、機織り機に向かう日々を送っている秋保光子さん(65)。東京出身で結婚後、埼玉県で暮らし仕事を続けていたが、ご主人の退職を機に6年前、夷隅郡御宿町に移住してきた。3人の子どもは独立し、今は釣り好きのご主人と愛猫2匹との生活。ご主人が埼玉の専門店から取り寄せる焙煎豆で淹れるコーヒーに、地元の美味しいと有名な菓子店のケーキを勧めながら語る秋保さん。
「10年以上前に青森県に旅行で出かけた時に出会った津軽の裂き織り(伝統工芸『津軽裂織』)。おばあさんがボロ布を裂いて機織り機で織っているのを見て以来やってみたいと思いました。不要になった着物を再生したいという気持ちがありました。母が沢山の着物を持っていたこともあってボロボロになったものをリメイクしたいと考えたのです。思い入れのある着物や昔の風呂敷などが織物になって甦るのに惹かれたし、どう仕上げたら、その布の魅力を一番引き出せるかを考え、それが素敵に甦った時はすごく嬉しい。そして、糸からでなく布から作ることにも魅力を感じます」
秋保さんが織るものは、コースターや携帯ケース、財布、ランチョンマット、テーブルセンターなどの小物雑貨やバッグなど。ひとつのバッグを制作するには1カ月以上かかる。 「以前から自分の定年後のライフワークにしたいと思っていた裂織。作っても作っても作りたいものがいっぱいある。作る意欲も作りたいものも私の中で尽きることはありません」。デッキから海を望めるログハウスに越してきた当初は愛猫は4匹だった。夫婦共に猫好き。機織り機の傍らで眠る猫を見て、工房名を『猫の夢』とした。
一つひとつ心を込めて織る布小物。展示会は昨年県内外で何回か開催したが、今後の予定は未定。口コミでの注文制作が多い。現時点では大原町の手作り作家の店『外房長屋』で展示販売中。
秋保さんは「私のバッグは布をたくさん使っているにもかかわらず織ってあるので軽くて丈夫。ある程度の年齢になると皮のバッグは重く感じる。だから軽いバッグは喜ばれています。また、実用的であることと、布に他の素材を組み合わせたものも作ります。バッグの四隅がすり切れたら全部ほどいて洗い、裏は作り直し底は詰めるなどアフターフォローも。裂織は高価だというイメージがあり、いいと思っても買えないと聞き、私は使っていただくことで裂織の良さを多くの方に知ってほしいから、主婦が買いやすい値段で提供しています」と話す。
地元の人たちとの交流が楽しい、魚や野菜に四季を感じる、そんな御宿での暮らしを満喫している秋保さんだった。
問合せ 外房長屋
TEL 0470・63・2200
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