日本学生科学賞 全国審査にてダブル入選 クロベンケイガニとヨウ素時計反応

県立大原高校生物部 生物班・化学班

 長い歴史を誇る県立大原高校生物部が千葉県児童生徒・教職員科学作品展にて、生物班は最高賞である千葉県知事賞受賞を、化学班は千葉県高等学校教育研究会理科部会長奨励賞を受賞した。さらに中・高生の科学コンクールとして最も権威のある日本学生科学賞に出展できる県内の高校代表6点のうちの2点に選ばれ、ともに全国審査で入選3等となった。
 生物班の研究テーマは『クロベンケイガニの生活史に関する研究』。千葉県レッドデータブックにも載るカニの産卵・ふ化から上流への移動までの生活史を観察してまとめた。クロベンケイガニが多く生息する場所はコンクリート護岸工事のされていない土手や雑草やヨシが茂る川岸。同校の近くを流れる観察場所の塩田川について「見た目は濁っていますが、80種以上の生物が確認されており多様性があります」と顧問の西友夫教諭は語る。
 観察は川岸で、素手や網を使ってカニを捕獲し、計測する。抱卵メスには標識をつけて戻す。転んだり、ぬれたり、携帯を落としたりすることもあったそうだが、部長の千葉麟也くん(18)はなんだか楽しそう。「制服のまま捕まえに行ってズボンを濡らしたこともあります。標識をつけたカニに出会い、俄然おもしろくなりました」
 抱卵メスがふ化幼生を水中に放すことを放仔という。7月から8月にかけてプランクトンネットで「何かがいそう」と採ってきて顕微鏡で幼生を発見。海ではなく生息域の川で放仔すると改めて確認した。生まれたばかりの幼生を淡水と海水中で飼育すると、淡水中でも1日程度生息できることがわかり、放仔後、塩分を含む汽水域までたどり着くことも可能だと実証した。
 「ふだんは静かだけど2・3年生は元気がよく、1年生ものんびり見えるけどいざとなれば働きます」という生物班の男子部員は7名。まだ研究半ばなので受賞したときは「まさか、県で一番になるとは思いませんでした。自分たちで詳しく調べたから評価されたのかもしれません」と冷静。今後は海から遡上する過程を解明するという。
 普段の部活では生物飼育、夷隅周辺の自然観察なども行う。今年はゲンジボタルの観察、磯、干潟や河川の生物調査を行った。冬はカニが冬眠中なので、魚や両生類などの透明標本を作ったりしているそうだ。
 化学班の研究テーマは『ヨウ素時計反応の誘導時間を左右するもうひとつの要素』。吉田有佐さん(18)と安東里菜さん(18)の2名が「色の変わる化学反応の研究をしたい」と取り組んだ。ヨウ素時計反応とは透明な2種類の水溶液を混ぜると、数秒(誘導時間)後に全体が濃青紫色に突然変色する反応のこと。誘導時間は、時間の経過とともに水溶液に酸素が解けることで刻々と短くなるらしいが、詳細については研究されていなかった。研究の目的は「誘導時間を正確に捉えて、自由にコントロールすること」だという。
 実験はヨウ素酸カリウムとデンプンの水溶液に亜硫酸水素ナトリウム水溶液を加え誘導時間を連続して測定する地味な作業を繰り返す。データを処理すると、時間の経過とともに短くなる誘導時間のグラフができる。水溶液の濃度を間違えたり、ガラス器具を壊したりと苦労しながら、ついに水溶液を氷水で冷やし酸素の溶解度を大きくすることで、誘導時間を求める一般式を導き出すことができた。
 実験は大気圧や室温などによって変化するので、やればやるほど複雑になる。常温での一般式を作るため24時間連続測定実験も行った。「24時間5分間隔で測るので眠れなくて大変でした」と二人は少々緊張気味にインタビューに答える。楽しかったのは「24時間の実験のとき、先生がチゲ鍋を作ってくれたこと」。受賞については「あまり実感がありません」と淡々としている。
 「全国審査は甲子園出場ぐらいの価値があるのに、目立ちませんね」と顧問の両角治徳教諭は残念そう。毎年、日本学生科学賞では優秀な研究をした高校生を世界最大の学生科学コンテスト国際学生科学技術フェア(ISEF)に派遣している。将来の夢は化学の教師という吉田さんと看護師という安東さん。「アメリカに行ってみたかったな」と引き続き研究への意欲を見せていた。

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