こでまりの夢~かきくけこの教訓~

 明けましておめでとうございます。2005年5月に「こでまりの夢」のコラムが始まって今年で20年になります。今回は第1回で掲載しました『かきくけこの教訓』を、そのままご紹介したいと思います。

   

 今から10年前、3歳と1歳の娘を近所で遊ばせていた時のことだった。私たち親子の前に、ひとりの老紳士が通りかかった。その人は、お洒落な帽子をかぶり、カジュアルな靴を履いていた。そして私を見ると立ち止まり、話し始められた。
「私はね、中学校の校長をやっていたのですが、数年前に定年になり引退したんですよ。それから毎日、ひと駅分くらいは歩くようにしているんです」そう言うと、その人は娘の顔をのぞき込んだ。しばらく話したあと「あなたに良いことをお教えしましょう」と言われた。
 私は「え?」と少しビックリした。初めて会った人が何を教えてくれるのだろうか?と思ったからだ。「かきくけこの教訓って言うんですよ」と、その人は私の横に並んで立たれた。「か、確認する。き、記録する。く、工夫する。け、検討する。こ、行動する。これを頭に入れて子育てしてごらんなさい。良い子になりますよ。迷ったら、この言葉を思い出してください。きっと良くなります。頑張ってくださいね」と言うと、その人はニコッと笑い歩いて行かれた。
 私は不思議と素直にその話を胸に収めることができた。そして、見知らぬ人からの思いやりの言葉に胸が温かくなった。今思うと、あの頃の私は決して楽しい日々を送っていなかった。子育てに苦悩し、余裕もなかった。それが私、いいえ、娘の顔に表れていたのだろう。
 10年たった現在、私は4人の子どもの子育てを楽しめるまでになった。見知らぬ人からの思いやりを、今度は私が若いお母さん方へ伝えていけたらと思っている。
(初掲:シティライフ2005年5月21日号・外房中央版)

   

◇中嶋 悦子(なかしま えつこ)
1965年生。宮崎県出身。二男二女の母。大網白里市在住。エンカレッジ・ステーション(株)代表取締役社長。NPO法人民間児童館おおきなかぶ理事長。社会福祉法人ありんこ会理事長。ありんこ親子保育園園長。保育士。エッセイスト。
Tel.0475・53・3509

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