体をよく動かし、作物を育て、新鮮なものを食べる 人生の最後まで元気に健康になる農園を ~Holy Bee’s Garden 園主 堀部洋保さん~【長柄町】

「人生100年時代、どうやったら幸福な終活の日々を送れるのか。そのひとつとして、ヨーロッパで人気の体験・滞在型農園の菜園版的な、交流できる施設を考え、自給自足に近い生活で実践しています」と話すのは、ホリディ・ファーム『Holy Bee’s Garden』園主、堀部洋保さん(80)。市原市との市境近く、長柄町の里山に約3,000坪を開墾し、1年を通じ様々な無農薬野菜と果物を多品種少量栽培で育てている。

オーストラリアで大型果樹園を経営

 堀部さんは日本の農家としては異色な経歴の持ち主。大学卒業後は東京都の公務員として就職。教育委員会や財団などに勤め、視察や研修などで海外とも交流を持っていた。40代半ば、縁あってオーストラリア・ニューサウスウェールズ州カウラ市へ渡り、約10万坪の果樹園経営へと転職する。「農業は世界的課題である食糧問題、地球温暖化と直結しています。日本の食糧自給率は40%以下、有事に対応できないのは現状でも明らか。オーストラリアの季節は北半球と逆で、自給率230%以上の農産物輸出国。日本人は他に数人しか住んでいませんでしたが、オーストラリアでの大型農業と日本の高い農業技術を結びつけ、日本への安定した農産物供給源となるような一大生産地にできないか、また、付加価値の高い果実や野菜の生産で、過疎化する地域を活性化させられないか、と考えたのが始まりでした」

オリーブと麦の畑

 堀部さんが開園した地域は、オーストラリアの白ワイン用ブドウの一大産地で、無農薬の広大な牧草地での牧畜が盛ん。春はその牧草地に一斉に花が咲き、純度の高い高品質なハチミツも採れる。街中には工芸家や芸術家の工房があり、民泊できる農家も多数。どこも体験や滞在が楽しめるようになっていた。「広大な農園では、ミツバチによる受粉がなければ実がならないので、どこの農家もミツバチは大事にしていました。私も滞在型農園:ホリディ・ファームとして、30数名が民泊できるゲストハウスと60席ある農家レストランを作り、25年以上経営しました」

 73歳になった堀部さんは、オーストラリアでの事業を洪水で失い、日本に帰国した。ところが裁判で高齢者離婚。東京の土地と家を期日指定退去で手放すこととなった。「いきなり財産がなくなってほぼ無一文。どん底まで落ち込みました。死に場所を探して流浪もしましたが、絶滅が心配されている日本ミツバチの保護指導を依頼され、房総に来ることになったんです」。そして活動と生活の拠点として選んだのが、10年以上使われぬまま空き家バンクに登録されていた現住所・長柄町の平屋だった。

誰もが元気になる農園を

「本当に人との縁に助けられましたね」と当時を振り返り、堀部さんは言う。「敷地内の巣箱にミツバチがいますが、このハチはもとは市原市の天神山古墳にいたハチ。なので私たちの会は『天神日本ミツバチ保存会』と言います。農園作りも、菜園を持つ先輩方が色々手伝ってくれました。今も定期的にボランティアさんが来てくれます」

以前の間取りをそのまま活かした中廊下

 堀部さんは、公務員時代から引きこもりや不登校の子どもを持つ保護者の相談に乗り、オーストラリアの農園では実際に子どもを長期に預かって、農作業を通じ立ち直るきっかけ作りをしてきた。現在の農園もその延長上だという。「放棄耕作地や山林の活用、若い人たちとの交流による過疎地域の活性化、そして年齢性別問わず、生きがい作りや達成感を持てる場所として、新しい農業の形を模索しているところです」  堀部さんはオーストラリアと同様、この農園も民泊施設として登録。長年の豊富な経験で、宿泊したゲストから高評価を得る『スーパーホスト』となっている。採り立てのハーブや野菜で作るお茶や食事、畑での作業や収穫体験、庭のピザ窯でのピザ作りやバーベキュー、小さな池でのどろんこ遊び、トンネルのある裏山への散策。どれもすべて堀部さんがこの7年で整備・手づくりしてきたものを活かし、自由に楽しめる。別名『動くホテル』のキャンピングカーや和室にベッドを設えた客間があり、外国客も多く、日本の里山を満喫していくという。

「現代は老若男女関係なく、孤独感を持つ時代。農業は『食』という命につながる現場です。自分で体を動かし、作ったものを新鮮なまま美味しく食べ、ぐっすり眠る。非日常の楽しみがあれば、一時期でも悩みやストレスを忘れられます。道具もあるので何も持たずに来て、ゆっくり大らかな気分で過ごしてもらえれば」と堀部さん。

農園入口と主屋

 今後はさらに果樹園を充実、ゆくゆくはヨーロッパの昔ながらの『コールドプレス製法』でのオリーブオイルも作りたいと言う。今は、裏山の台風の倒木を加工し作る無料休憩所の完成が目標。「観光地などを自転車で回る人たちのための休憩所です。コーヒーなども無料で出したい」と、実現させたい夢はいくつもある。「山武市や木更津市でも、若い人たちが中心になって、グランピング場や週末菜園施設を作っています。それを応援しながら、毎日を元気に生きて行けたらと思います」と堀部さんは笑顔で語った。

 

問合せ:堀部さん Tel.080・5865・5180
長生郡長柄町刑部801
http://holidayfarm.jp/

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