地域のために「のれん」をかけて~市東地域15町会共創プロジェクト・十五や~【市原市】

【写真】お店の前で。『十五や』のTシャツを着た藤本さん(後列中央)と田頭さん(右隣)

 

 緑豊かな市原市東国吉で、県道21号線・128号線の三叉路交差点そばにある平屋建てのお店『十五や』。昭和の古い建物を運営メンバーほか手作業でリフォームし、駄菓子と地域の人が手作りした雑貨を販売する。営業時間が短いにも関わらず、地元の子どもたちだけでなく、近隣市町から大人の常連客も通い集まるという、不思議なお店だ。

町おこしを地域主体で

プロジェクトの活動『百ねんたんぼ』で稲の天日干し・おだかけの作業

『十五や』がオープンしたのは昨年2023年11月11日。店長の藤本さんほか、お店を運営するスタッフは5~6名。全員、町おこしの『市東地域15町会共創プロジェクト』のメンバーだ。「市東地域は古くからの農村と、周辺に新しくできた住宅街で、15の町会があります。入り組んだ谷津に清水が湧く、自然豊かな場所ですが、住民数の減少や高齢化、耕作放棄地の増加、小学校の廃校やバス路線の廃止など、様々な問題があります。それらの解決に向けて3年前に発足したのが、『市東地域15町会共創プロジェクト』です」と話すのは、同プロジェクト事務局の田頭さん。各町会長と地域住民38名が集まり、市の地域連携推進室の支援を受けながら、地域の発展や再生のために様々な活動を展開している。

 たとえば使われていない水田を『百ねんたんぼ』と名づけ、米作リ体験や皆で作った新米で太巻き寿司を作って試食したり、2019年の台風で崩れて見られるようになった『瀬又の貝層』を整備して見学スポットにしたり。フォトコンテストや防災をテーマにしたファミリーキャンプの実施、草刈り用の刈払機の講習や里山体験などを行う自然学校など、その内容は多岐にわたる。『十五や』もこのプロジェクト活動のひとつで、メンバーの「駄菓子屋をやってみたい」という要望から形になったという。

「地域の子どもたちからお年寄りまで、気軽に遊びに来て楽しめるコミュニティのひとつにしたいと、昨年4月頃から計画しました。点在する市東地域の見どころやプロジェクトの活動紹介などを情報発信する場にもなっています」と藤本さん。子どもたちが自宅にいる時間帯に合わせ、開店は(水)(木)(金)15時~17時と、(土)(日)(祝)の12時~17時(11月から水曜日も定休日)。学校帰りや休日、友だち同士や祖父母と一緒に来て、皆が駄菓子の買い物を楽しむ。すぐに『十五や』は地域の人たちが集まる店になったそうだ。

広がるファンの輪

『十五や』で駄菓子を買う子どもたち

 開店してしばらくすると、地元住民のほか、来店する他地域の客も増え始めた。「週末、茂原や白子、千葉市あすみが丘の方が来て、『いつも前の道を通っていて気になっていた。ようやく開いている時に来れた』みたいな事を仰るんです。これは私たちも予想外でした」と藤本さん。通勤や仕事などで県道を使う人たちが、看板は新しいのに店が開いておらず、どうしても気になった、ということらしい。ちはら台などからも若い世代のファミリーが来店し、「なんか面白そう」「こんなお店見たことない」と親子で楽しんでいく。「昔ながらの素朴で、飾り立てていない手作り感しかない雰囲気がいいんだと思います。販売する雑貨もすべて手作り作品ですし、お店の奥は一枚板のテーブルで、休憩やワークショップもできるようになっていて、ここが落ち着くんだと読書する方もいます」。

 不定期に来るベーゴマの名人が自作の台を持参し、お店にいる子どもたちと一緒に遊んだり、また、レゴブロックで作品を作るちはら台の小学生の男の子が『十五や』の店舗を再現し持参したりしている。「茶色のブロックは数が少なく、苦労して集めたそうです。大好きなお店だから作ったと言われて、メンバー一同、感激もひとしおでした」。店の窓際に飾られているが、店内の一部まで作っており、こちらも名人である。

店内のリサイクルコーナー『ぐるり』

 テーブルのある部屋の商品はすべてリサイクル。システムは物々交換で、一つ持ってきたら一つ持って帰れる、というもの。服やおもちゃ、本、生活雑貨などがあり、『ぐるり』と名づけた。お店の外にあるガチャガチャは、藤本さんが作った可愛い布小物の野菜たちが出てくる。店の営業中を示すのれんも藤本さんが作成したものだ。「共創プロジェクトへの市の支援は3年間。来年からは自分たちで自立した活動を実践する必要があり、お土産品の試作もしています。このお店は地域の人たちの拠り所であると同時に、地域のための活動を支える場でもあります。ひとりでも多くの方に、プロジェクトの活動を知ってもらって、広がっていければと思っています」と藤本さんは朗らかに話した。『十五や』は市原市独自のポイント制度である『イチ推しポイント』も活用できる。のれんがかかっていたら、ぜひご来店を。

 

●市東地域15町会共創プロジェクト

HP:https://shito-ichihara.com/

mail:contact@shito-ichihara.com

※プロジェクトに参加してくれるメンバーも随時募集中。

※駐車は十五や向かいの『粘菌博物館』敷地内でお願いします。

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