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南太平洋の小さな島国 環境問題で起こる大きな変化~千葉県ユニセフ協会 国際理解講座~【千葉市】

【写真】首都フナフティがあるフォンガファレ島

 11月9日(日)、千葉市生涯学習センターで開催されたのは千葉県ユニセフ協会による国際理解講座『下村靖樹氏講演会 ―紛争ジャーナリストが見た『沈みゆくツバル』の今―』。ツバルは9つの島々からなるオセアニアにある国のこと。かつてはエリス諸島と呼ばれていた、イギリスの連盟加盟国の一つである。近い将来、国土が海面に沈むと言われ、知っている人も多いのではないだろうか。フリージャーナリストの下村さんは、これまでアフリカの紛争地帯を取材することが多かった。しかし、2024年9月から今年10月にかけて、国際機関太平洋諸島センター「Pacific Discovery Project 」のプロジェクトマネージャーとして太平洋諸国を回り、広報を務めた。今回は、その諸国の一つである『ツバルの現状』について報告と共に、危機を訴えた。

ツバルってどんな国?

 小さな島国・ツバルの国土面精機は26平方キロメートル。これは東京都品川区とほぼ同じくらいの面積で、世界で4番目に小さい国土となっている。人口は約1万2千人で、首都フナフティの島には半数を超える7千人が住んでいる。「元々はイギリスの植民地でしたが、1978年に独立。私は南国のレゲエの音楽が響く、明るい国を想像していました。確かに、人々は陽気で親切、とてもいい国です。でも、経済面や生活、自然環境で多くの問題と課題を抱えていることを知りました」と話す下村さん。かつて取材で撮影したアフリカの写真も、冒頭で比較資料として提示する。
「私が初めてアフリカを訪れたのは33年前。以来、30回以上現地取材をしています。今も継続して取材しているのは、子どもの兵士の問題。大人に支配され、感情を無くした子どもの目や表情には、共通して生気がありません」。映し出された写真は、子どもが慣れた手つきで銃をもつ姿や、実際に虐殺が起きた建物の写真で、とても生々しいものがある。「アフリカの紛争には、自分は第三者として取材ができたが、南太平洋は第二次世界大戦で日本が深く関わっている。初めて、自分が無意識にその地域から目を逸らしていたと気づかされた」という下村さん。ツバルの国が戦地になることはなかったが、それでも日本人に対して友好的なツバルの人々に、心を癒されたとか。

下村さん

 そんなツバルでの問題は、まず経済状況である。島民の収入は大きく分けて3つ。海外からの支援援助金。そして、国外で働く親戚や家族からの仕送り。そして、島の持つドメインを海外が購入することで得るライセンス料である。「すべてを輸入に頼っているので、物価も高い。ペットボトル1・5ℓの水が400円。コーラが半分の200円だから、みんなそっちを飲む。そして、太ってしまう。ミロの粉末パックは2500円くらいする」と、驚愕の値段。また、年間3600人程度しか観光客が来ないので、外部からの収入も見込めない。
 そもそも、下村さんが日本からツバルに行くために、フィジー経由で42時間要した。ツバルは最もアクセスが悪い国の一つと言われていて、週5本しか航空便がなく、うち9割がフィジー発着便となっている。「空港も驚きです。滑走路のすぐ脇に住宅があり、人々が暮らしている。フェンスなど特になく、夕方になるとみんなそこでピクニックやラグビー、バレーをして遊ぶんです」と、下村さんは笑う。ツバルの人は、ツバルが大好き。青い海と珊瑚に囲まれ、穏やかな時間が流れる島が目に浮かぶようだ。

日本が支援した発電機が首都フナフティの電力を担っている

国の滅亡の危機

 2つ目、かつさらに大きな問題が自然環境である。標高2メートルほど、3階までの建物しかないツバル。首都フナフティがある島は南北に細長く、その距離は12キロメートル、最狭部は5メートルほどしかない。近年、温暖化の影響で氷河は溶け、海水が膨張することで海面が上昇している。下村さんは、「人口の増加によって居住地域が広がり、結果、浸水や塩害も多くなっています。また、生活排水による水質汚染や海水温の上昇によりサンゴの白化が進み、自然の防御力が低下しているのです」と、警鐘を鳴らす。何らかの変化がない限り、ツバルが将来的に沈むのは、明らかである。
 島民たちも海面上昇への不安を感じている。オーストラリアではすでにツバル難民を受け入れる政策が立てられ、島民の8~9割が移住を希望しているとか。ツバル国の首相はこの事態に危機感をもち、『ツバル』という国をサイバー上(インターネットにおける仮想空間)で存続させる意思を世界に発信している。「今後、デジタル国家については様々な議論が行われていくでしょう。日本も他人事ではありません。気候変動や移民政策など、80年後の未来に向けて、世界に視野を広げて日本の国という存在と向き合っていきましょう」と訴えた。講演後、来場者からは「現地の人は、実際、どうやって生活しているんですか」、「暑いって、どれくらいですか」など、様々な質問が飛び、ツバルという国への理解を深めていた。

問合せ:千葉県ユニセフ協会
Tel.043・226・3171

「Pacific Discovery Project」のYouTube
https://www.youtube.com/playlist?list=PLGiMXiX19xGNGbncJtF9yUqjVISmjRKYG

夕刻、滑走路上でスポーツに興じるツバルの人々