CITYLIFE 地域情報紙シティライフ 祝!御鎮座1350年・飯香岡八幡宮~いつでも訪ねられる場所であるために~【市原市】 2025.03.07 「伝統の核となる部分は変えてはいけない。でも、守るだけでなく変化も必要だ」。強い眼差しでそう告げるのは、市原市八幡にある『上総国総社飯香岡八幡宮』の宮司・平澤牧人さん(49)。古記によると白鳳4年(675年)に天武天皇の勅命によって建立されたという、由緒正しき八幡宮である。天平宝字3年(759年)には国府八幡宮として定められ、やがて上総国総社として皇室をはじめ、源氏や北条氏、足利氏や徳川氏など時代を彩る有力者たちに崇敬されてきた。その飯香岡八幡宮が今年、御鎮座1350周年を迎えることの記念行事として、3月15日『奉幣祭』、10月12日には『記念神幸祭』を盛大に執り行うことを予定している。 長き歴史の重み 平澤さんが同八幡宮で宮司になったのは3年前のこと。「それまでは、職員としてこちらに勤めていたんです。私は大学で神職を学び、卒業後は京都の下鴨神社、そして五井の大宮神社に長く奉職していました。市原市内の出身とはいえ、こちらが地元ではないので分からないことも多く、初めは大変でした」と話す、平澤さん。今回の式年祭についても同様だ。「50年に一度の祭りとあって、一生に一度当たるかどうかといわれているほど大きな式典です。日本各地から来賓をお招きするので、大変賑わうと予想しています。3月の祭りでは、神社本庁から献幣使が来て祭詞を奏上することになっています。一般の方もご覧になれますので、ぜひお越しください」と笑顔で告げる。 長い歴史の中で、決して途絶えることなく人々に寄り添ってきた八幡宮。地域の人々が病める時も健やかなる時も、大切なタイミングで足を運ぶ場所だ。「これからの未来、日本人の人口は確実に減っていき、海外の人が増えていく。日本的なものが減り、日本ってどこにあるの?と問われる時がくるかもしれない。そんな時、初めて見る、知る人が最初に訪ねてくる場所でいられたらいいと思います」と、平澤さんは未来も見つめている。 宮司・平澤さん 神職に勤めることの魅力は、3つあるという。1つ目は、『季節の豊かさを感じられること』。春夏秋冬、季節の行事を催すことで、それぞれの味わい、その美しさをより身近で実感できることだろう。特に、同八幡宮でも大きなイベントである秋季例祭が終わると、一気に冬に向かって季節が動き出す。境内に広がる色だけでなく、一つ一つの行事を終えると共に、時がゆっくりと移り行くのだ。 2つ目は、『地域ごとに特色があること』。関西と関東の地域を見て学んできた平澤さん。「祭りの開始の儀礼、神輿を担ぐときの掛け声ひとつにしても、地域ごとの風習は異なるのでとても興味深いです」と、関心は止まない。同八幡宮にも、柳楯神事というものがある。柳楯は、上総国の国司の権威の象徴とされ、国司が行うべき放生会を実施するために海に向かう行列の名残で、市原・五所・八幡を練り歩く。「柳楯の由来や起源には諸説ありますが、ずっと制作に携わる司家があります。こんな風に地域の核となる伝統を守っていきたい」と話す。 そして、3つ目が『人の人生の喜びの時間に携われること』である。お宮参りや結婚式、成人式や地鎮祭など、人々は人生の節目に神社を訪れる。「神主は、なかとりもちと呼ばれ、人と同じ立場に立って、神様にみなさんの言葉を伝えるのが役目です。主観が入らない様に、淡々と神に伝えるように心がけています」という。 御縁起図 温故知新のひかり 同八幡宮には、約300の古文書がある。冒頭で書いた歴史についても、古く守り続けられた文書に書き残されている史実だ。「地元市民や専門家など、様々な方が歴史を知るためにここを訪れます。古文書のどこを読めば調べたいことが分かるのか、ご案内できるようにしています」という、平澤さん。ひたすら古文書を読み解き、また年配の人々から仕入れた情報をメモして、地域の知識を学んできた。「神社はどちらかといえば保守的な場所で、私もどちらかと言えば、過去へ過去へ、と目が行く方です」という平澤さんは、古文書の中で見つけた、現代では無くなっているものを復活させたいと願う。 同八幡宮では、光にかざすとキラキラ光るレースお守りや切り絵の絵馬など、目を引くものも多い。「今年の様々な祭りを、楽しみにしていてください」と、最後に平澤さんは笑顔を見せた。なお、同八幡宮では、御鎮座1350周年に伴い、御奉賛を募集している。詳細は問合せを。 ●奉幣祭 3月15日(土) 午前10時:摂社六所御影神社式年奉幣祭 午後2時:飯香岡八幡宮御鎮座1350年奉幣祭 問合せ:飯香岡八幡宮社務所 市原市八幡1057の1 Tel.0436・41・2072 表参道入口