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花を育てて人とのつながりを~青葉台在住 石井健さん~【市原市】

【写真】市原青少年会館・玄関前にて、植えたパンジー・サクラソウと石井さん

 市原市八幡にある市原青少年会館の玄関前では、春と秋、プランターに花を植え替える。その花を提供し、植え替え作業をボランティアでしているのが、青葉台在住の石井健さん。長年、市原市内の小学校で教員を勤め、定年後の現在も市原市レクリエーション協会や公民館運営審議会、青葉台小・姉崎東中の学校運営協議会など、多くの活動に参加する。「どれも好きでやっていることですが、自分のためも大きいですよ。一人暮らしなので、何もなかったら引きこもってしまう。自宅で花を育てることも、色々な方と話ができるきっかけづくりにいいんてすよ」と朗らかに話す。

子どもの頃から植物好き

 石井さんの生まれは群馬県高崎市。最初に花を育てたのは小学校低学年のころだった。石井さんを含めた兄弟姉妹8人に、父親が一人ずつ花壇を作ってくれたという。「父は庭いじりの好きな人で、年中やっていましたから。種のまき方、挿し木の仕方、苗の植え替えなど、私は見よう見まねで覚えて、自分でも花を育てました。特に植物の勉強をしたわけではないですが、その作業は父の影響か、好きでしたね」
 学生時代は植物から遠ざかったが、結婚し、市原に自宅を構えてから庭いじりの熱が再燃した。様々な草木を植え、植木鉢などで花も育てた。最初に大量に苗を育てたのは約25年前、戸田小学校の教頭時代。学校のバザーに提供したことだった。「自分も花の苗を育てて提供すればいいんじゃないかと思いついたんです。バザーの時期に合わせて、ポットで育てた苗は200本以上ありました」。教員の仕事である家庭訪問が好きだったのも、植物絡み。「私の時代は毎年5月頃に行われていたのですが、学校から歩いて各家庭へ行くので、道中、色々な家に咲く花が楽しみでした」。訪問先の家の花を奇麗だとほめたら、翌朝、その家の子どもが花を教室に持ってきた。「おばあちゃんが花を切って持たせてくれたと言うんですよ。それも嬉しかったですね」
 定年後は花だけでなく、果物や野菜もプランターや鉢植えで栽培。一人暮らしになったこともあり、さらに様々な花を育てるようになった。「妻と死別してひとりで家の中にこもっていると、人と話す機会も、住んでいる地域でのつながりもなくなってしまう。庭いじりをして、季節ごとに色々な花を咲かせていれば、多くの人に見てもらえるし、通りがかった人と花を通じて気軽に話ができます。奇麗だと喜んでもらえるし、やりがいになりますから」。年間を通し、どれだけの種類の花を育てているか、すでに分からないほど多いそうだ。

昨年プランターや鉢植えで育てたスイカ(左)とパイナップル

花のボランティア

 石井さんが市原青少年会館に花を飾るようになったのは12~3年前。度々会館に行っていた石井さんは、老朽化してきた建物が寂しげに見え、「花を飾ったら来る人がちょっとでも楽しんでくれるのでは」と思ったという。会館側に話し、玄関前の階段横のスペースにプランターを並べ、春と秋に咲く花の苗を自宅で育て、植え替える。他にも市原市文化の森(福増)の駐車場に約10年前からと、計4か所に花を設置する。「文化の森は、私が会長をしている市原市スナッグゴルフ協会が大会で使っていますので、ここも豊かな緑に花があったら映えるだろうと、プランターを並べさせてもらっています」。4カ所分の花苗は、毎年220~240本くらい。プランターで50~60個分にもなる。「今は5月上旬の植え替えに、松葉ボタンを育てています。自宅の駐車場は車2台分ですが、半分は苗を育てているプランターと鉢植えなどを置いています。苗はそのスペースだけでは足りないので、家の横や裏などにもあります」
 育てた苗はポットで育てているのもあるが、プランターが大半。それをポットに移し替え、移植先に運ぶのも一仕事だ。「会館のスタッフが軽トラで花苗を運んでくれますし、春と秋の植え替えは、暑くも寒くもなく他の季節より楽ですよ」と石井さんは言うが、次の季節に奇麗に咲くように、設置してあるプランターの土を替え、施肥をし、苗を植え込む作業は、なかなかの重労働だろう。秋に植える花の苗は夏に育てるというから、庭での作業は蚊に食われながらになるはずだ。初夏に咲くクジャクサボテンも鉢で増やしていて、花がついたら毎年、会館の玄関先に運んで飾るそうだ。

昨年咲いたハスの花(左)と月下美人

 今年の春、石井さんの庭では、ニホンサクラソウ、イワツツジ、セイヨウダリア、フリージア、ハナミズキなどが咲いた。今はボタン、ブーゲンビリアなど。ブーゲンビリアは挿し木でも増やしている。サクランボの佐藤錦の一鉢はネットをかけて育てており、すでに小さい実がついている。直植えのユリはカサブランカ。庭木の間に毎年支柱を立て、今年も生育は順調。ジャガイモ、サヤエンドウ、ミニトマトも青々とした葉を茂らせている。月下美人やハスの花はこれから。花がついたら、庭の中から駐車場に出すのが石井さん流だ。「近所の人や散歩に来る人が楽しみにしているので、よく見える所に出すんです。スイカは毎年育てていますが、大きくなるのを皆さん、チェックしてますよ。気に入った花は差し上げたりしてね」。月下美人も人気で、日中の散歩で花を確認した人が、夜、わざわざ花を見に訪ねてくることもあるという。昨年はパイナップルが育ち、デコポンも20個ほど収獲した。モミジやヒメガキの盆栽もあり、紅葉したら毎年、他の花のように駐車場に移す。冬はマンリョウが色づき、スイセン、アセビが咲く。
 家の敷地内は、そうした季節ごとの植物のプランターや植木鉢で埋められている。家の周りも人ひとり通るスペースが残っているだけだ。「家で育てて皆さんに見てもらっているのも、会館などに花を飾っているのも、恩返しみたいなものです。私は市原に来て、多くの良い人たちに恵まれた。妻も市原に来て出会ったし、同僚、先輩、各学校の保護者の皆さんにも良くしてもらって。そうした人たちに直接返すことはできないけれど、代わりに花やボランティア活動で、ちょっとでも地域に何かできればいいなと思うんです」。青少年会館は老朽化のため、今年度いっぱいで閉館する。花の植え替えも、この春が最後。「来年の春の花は秋に植えられないので、今年は11月くらいまで楽しめるような花を植えるつもりです。他の場所も元気があるうちは続けますよ」と石井さんは笑顔で語った。

前庭と駐車場の横に並ぶ緑と花