いすみ市の歴史がいま、伝説から蘇る

 3月26日(日)まで、いすみ市郷土資料館(田園の美術館)で開催されている『第6回いすみ市の文化財展』では、夷隅川流域にスポットを当てながら、まだ解明されていない部分が多くあるいすみ市の地誌を紹介している。
 夷隅川は千葉県南東部を流れ、県内最大の流域面積をもつ川。勝浦の海が間近に迫る山間部を源に、複数の支流を交えながら長く、そして複雑に蛇行して大多喜町を抜け、いすみ市岬町和泉で太平洋に注いでいく。
 同館学芸員の嶺島英寿さんは、「夷隅川ほどの蛇行は全国的に見てもとても珍しいんですよ。江戸時代に上総・安房をめぐり歩き、道中に見聞きした寺社や伝承についてまとめた中村国香の『房総志料』を展示しているのでご覧ください。また、かつてのいすみ市内の地図もあります。家々や道、山などの大まかな部分は変わらないことが見て楽しめると思います」と説明する。『房総志料』は安房の地が題材となっている『南総里見八犬伝』を書くにあたり、作者の滝沢馬琴が参考にしたとされる貴重な物で、いすみの地名も見られるとか。
 そして、「展示の目玉は、市内の行元寺と東陽寺に各々所蔵されている善光寺式の阿弥陀三尊像です」と話す嶺島さん。6世紀ごろ朝鮮半島から渡来されたとされる長野県にある善光寺の本尊だが、浄土信仰の隆盛に伴い各地で多くの模造が作られた。
 現在、千葉県では35件の善光寺式阿弥陀三尊像の伝来が確認されている。行元寺の三尊像は鎌倉時代後期に作られたとされ、その中でも優秀な作品として昭和42年千葉県の有形文化財に指定された。普段、東陽寺共に三尊像は非公開なので、貴重な機会となる。
 また展示物は他にも、昭和44年に作田の御館台遺跡よりほぼ形が壊れることなく発掘された須恵器大甕や高さ1m以上の仏頭の実寸大レプリカ、旧岬町出身で善光寺の本堂作りに貢献した慶運上人についての資料など様々なものがある。
 隣室では『静遥パステル風景画展』も同時開催しており、夷隅川流域の風景画を13点展示している。静遥さんは千葉市緑区在住で、長年房総の風景を写生し、四季折々の見どころを隅々まで知り尽くしている。万喜城跡から望む、夕暮れの田園風景はいつまでも眺めていたくなるほど表現は繊細だ。「この展示会のために、夷隅川の本流を描いていただきました。風で倒れた木や竹が川沿いに倒れて生い茂っているのも夷隅川の特徴といえるでしょう。このよくある風景を楽しんでもらえたらと思います」と最後に嶺島さんは語った。

問合せ いすみ市郷土資料館
TEL 0470・86・3708
開館時間914時30分。入場料無料。休館日(月)(祝日開館)

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