海辺の波や風のようにナチュラルな音楽を

ギターとフルートのデュオ スケッチブック

 パティオから明るい光が差し込む自宅兼スタジオにアコースティックギター、エレキギター、ウクレレ、子ども用ギターなど12本の楽器が並ぶ。壁に飾られているのはジャズフルート奏者ジェレミー・スタイグ直筆のアート。市原市辰巳台に住むギター奏者西村俊哉さん(45)・フルート奏者いづみ(44)夫妻を訪ねるとさわやかな笑顔で出迎えてくれた。

スケッチブック 二人が出会った吉祥寺は音楽の溢れる街。喫茶店からはジャズが流れ、ライブやコンサートがあちこちで開かれていた。いづみさんがクラッシック専門の音楽活動をしていたときに、友人にジャズやポップスを奏でるバンドに誘われ、「こんなに楽しい音楽があるとは」とメンバーとなったのは1999年。もちろんギター担当は俊哉さんだった。翌年にはデュオとしてもスタート。身軽に持ち運びできるスケッチブックと楽器を重ね、デュオのときは鉛筆でデッサンをするように、バンドのときは色鉛筆でカラフルな絵を描くように演奏したいと『スケッチブック』と名づけた。「喫茶店での初ライブは惨憺たるものだった」と笑う。千葉からギターケースを杖がわりに這うように会場に現れた俊哉さん。「ぎっくり腰になり、脂汗をかきながら何とか終えた」と思い出を語る。

 2005年に結婚し、吉祥寺で俊哉さんはバンド活動やギター教室を開き、いづみさんは木管アンサンブルやフルート四重奏団に所属しながら、有名オーケストラにも賛助出演していた。しかし、「子どもが生まれると、自宅でのギターレッスン中は隣の寝室で母子が息を潜めて待つような生活だった」。2009年、子どもを安心して育てられる環境があるからと俊哉さんの実家のある市原市へ移り住み3世代同居することにした。「都会ではどんな音を出すのかお手並み拝見という態度で聴く人もいるのに、自宅や公民館でコンサートを開くと皆さん心が柔らかいというか素直に喜んでくれる」と二人は市原で演奏する喜びを話す。

 高齢者施設、保育園や公共施設で演奏活動をはじめたのは3年前。看護師が率いるキッズベリーダンス『ぷっちんべりんず』と一緒に施設訪問をするうちにボランティア団体『そよかぜ』を立ち上げた。クラッシックやポップスのほかに唱歌やナツメロを演奏するとお年寄りが涙を流しながら聴いてくれる。高齢者のために俊哉さんが和風のダンス曲も作った。
東日本大震災直後に福島県楢葉町から一時避難し、市原市の特別養護老人ホーム辰巳萬緑苑に1年半の間暮らした被災者と縁のあった『ぷっちんべりんず』。今年3月、一緒に福島県いわき市の被災者の住む仮設住宅を訪ねた。「僕らでいいのかと気持ちが重かったが、おにぎりやお菓子を山のように用意して待っていてくれた」。幼稚園と小学生の息子たちのギター演奏も喜んでくれ、お返しにカエルのかぶりものを着けた舞踊団が登場するほどの歓迎ぶり。7月には避難した介護士らが作るアマチュアハワイアンバンド『アロハローガンズ』が萬緑苑を再訪することになった。

 二人でこれからこうしようと話し合ったことはないという。音を出し合いハーモニーを奏でるように進む。ときには意見の合わない事もあり、コンサート中に「おっ、そう来たか。ならばこっちはこうだ」と音を競い合うこともある。それでも二人とも「音を追求し、音に浸っている時が1番楽しい」と口を揃える。「フルートは複雑な表現を出せないが、息遣いで作り上げる透明な音そのものが魅力」といづみさんが話せば、俊哉さんは「ギターはジャンルを問わない変幻自在な楽器。一人でメロディも伴奏もできるし、表現法もいろいろ。フルートとギターのデュオはシンプルな素材を楽しめるおいしいサラダのような感じ」と相性のよさを語る。

「目指すのは海辺で聞こえる波や風の音のような音楽。ぼーっとしていても自然に耳にはいる、空気みたいな存在でありたい。教室に通う子どもたちや息子たちの成長とともに違ったスケッチが描ける」とあくまでも自然体。昨年からいづみさんは呼吸法のトレーニングの指導をはじめた。緊張し易い方や演奏に悩む方、吹奏楽団のための正しい深呼吸の仕方やインナーマッスルの鍛え方で「体のコンディションを整えるとよい音がだせるようになる」とのこと。今後は『そよかぜ』として施設訪問する予定。(荻野)
問合せ ブリージンミュージック
TEL 0436・76・9001

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