宇宙と地上を結ぶ技術 人工衛星の声を聴く~勝浦宇宙通信所~【勝浦市】

【写真】第1展示室

 

 人々の暮らしを様々な面で支えている人工衛星。ロケットで打ち上げられた人工衛星は地球の周回軌道に投入された後、地上から24時間体制で見守られる。JAXA(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構)追跡ネットワーク技術センターは、国内7カ所と海外4カ所を拠点に人工衛星の『追跡管制』を行う。勝浦宇宙通信所は国内拠点の1つとして、他と連携しながら追跡管制業務の一翼を担っている。

そびえ立つパラボラアンテナ

勝浦第4送受信局パラボラアンテナ

 人工衛星の追跡管制とは、衛星から受信する電波で、衛星があらかじめ決められた軌道を正しく飛んでいるか、積んでいる電子機器が正しく動いているかを調べ、状況に応じて衛星に対するコマンド(指令)電波を送信し、衛星を維持管理することだ。太陽や月の引力、地球の重力などで徐々に軌道にズレが生じてしまうので、監視し続ける必要がある。勝浦宇宙通信所では、現在3基のパラボラアンテナが稼働している。それぞれ、直径10mの勝浦第1可搬局、直径11mの勝浦第3受信局、直径20mの勝浦第4送受信局となっている。可搬局とは、移動が必要となった場合に引っ越しが可能なアンテナだ。おわん型のパラボラアンテナで人工衛星から受信する微弱な電波を数万~千万倍に増幅し、受け取ったデータは筑波宇宙センターへ送られる。また筑波宇宙センターからコマンドを受けた時は、電波を増幅して人工衛星へ送信する。

 同通信所が追跡管制を行う人工衛星は現在8機。まずは災害や気候変動に対応するため陸地・海洋・大気の状態を観測する地球観測衛星は5機で、陸域観測技術衛星2号『だいち2号』、水循環変動観測衛星『しずく』、気候変動観測衛星『しきさい』、温室効果ガス観測技術衛星『いぶき』と、温室効果ガス観測技術衛星2号『いぶき2号』。次により高度な宇宙活動のため、太陽系と宇宙の理解を深めるために開発・運用している科学衛星は、ジオスペース探査衛星『あらせ』、太陽観測衛星『ひので』と、X線分光撮像衛星『XRISM(クリズム)』の3機だ。例えば『だいち2号』は、観測機器として、高性能マイクロ波センサ『Lバンド合成開口レーダ』を搭載しているため昼夜や天候によらず観測できるのが特徴で、地殻変動や森林の状態などを捉えるのが得意。今年1月に発生した能登半島地震では、国内防災機関などからの要請で、『だいち2号』の緊急観測データが提供された。

気持ちは宇宙へ

H-ⅡB(左)、H-ⅡA(右)ロケット模型

 施設内には展示室があり、開館時間内は見学が自由。第1展示室には、追跡管制の簡単なシミュレーション操作ができるコーナーや、国際宇宙ステーション(ISS)の模型、宇宙飛行士の宇宙ステーションでの活動の様子や宇宙食を紹介するコーナーがある。勝浦宇宙通信所やパラボラアンテナのしくみについても詳しく解説されている。

 第2展示室には、2006年頃まで勝浦にあった運用室で使われていた追跡管制設備が並べられている。実際に使われていた管制卓を触ることもできるので、ファンにはたまらないのだとか。『だいち2号』『しずく』『いぶき』などの人工衛星の模型が並び、それぞれの衛星の機能やミッションの『ココがスゴイ』というポイントなどを交えて細かく説明されている。すでに運用が終了している技術試験衛星Ⅲ型『きく4号』は、システム試験に用いられたものが展示されている。展示室の中央には、H─ⅡAとH─ⅡBロケットの模型も目を引く。人工衛星はどの部分に搭載されるのか、エンジンや燃料はどうなっているのか、わかりやすい解説が添えられている。小惑星探査機『はやぶさ』のミッションを体験できるシミュレーションゲームでは、探査機の打ち上げ、小惑星イトカワへのタッチダウン、大気圏再突入など『はやぶさ』の7年もの行程を実際の映像を交えながらゲーム仕立てで体験できる。

陸域観測技術衛星2号『だいち2号』模型

 7月1日には、先進レーダ衛星『だいち4号』を搭載したH3ロケット3号機が鹿児島の種子島宇宙センターから打ち上げられた。YouTubeのJAXAチャンネルでは、これからと過去のものも打ち上げの様子を観ることができる。同通信所の広報担当者は、「勝浦第4送受信局パラボラアンテナは直径20mで、現存するJAXAのアンテナの中で4番目に大きなものです。ぜひ見学に来ていただいて、大きなパラボラアンテナの迫力に宇宙を感じていただけたらうれしいです」と、話す。見学者には勝浦宇宙通信所のアンテナカードを1枚プレゼント。展示室の見学は年中無休(臨時休館の場合あり)。見学案内希望の場合は平日のみ、希望日の6カ月前から10日前までにFAXまたは電話にて申込み。このほか年に1度のイベントとして特別公開日があるが、今年度の日程は、決定後ホームページに詳細があげられる。詳しくは問合せを。

 

問合せ:勝浦宇宙通信所 Tel.0470・77・1601

勝浦市芳賀花立山1の14

年中無休(臨時休館あり) 見学無料 10時~17時

http://fanfun.jaxa.jp/visit/katsuura/

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