千葉に吹かせたい琉球の風~紅翔エイサー護光琉~【市原市】

 エイサーは沖縄全島と鹿児島県奄美大島に伝わる伝統芸能の一つ。旧盆の時期に祖先の霊を迎え、送り出すための演舞で太鼓や獅子なども使いながら踊る。この演舞のエンターテイメント性をより高めて、市原や千葉を拠点に活動を展開している団体が、沖縄伝統芸能 創作エイサー団体 紅翔エイサー護光琉(びんしょうエイサーごこうりゅう)。2019年3月、千葉の人たちにも沖縄に興味を持ってもらいたいと願う代表の與那覇勇樹(よなはゆうき)さんが創立した。ステージは国府まつり、市文化祭などでも披露され多くの観客を魅了している。

練習の様子〜団長の思い〜

 出演ステージを終えたあとも、場所を変えて熱心に練習する団員たち。太鼓を叩きながら足を高く上げ、華麗に舞う姿は、圧巻の迫力で目を奪われる。一方、心揺さぶる歌唱や、祖先にささげる祈りの姿は時に切ない。 団員が皆一緒になって踊る時、何度も練習を積んだであろう子どもたちが見事に動きを合わせ、全体が揃う美しさにも驚かされる。ステージが好評で、出演依頼が後を絶たない理由がわかる。琉球の風を運んでくるかのようだ。

 與那覇さんと互いに信頼しあい、太鼓指導にあたる団長の白木粛斗(しろきしゅくと)さんは「10年ぐらい前、美容師としてやっとお客さんの髪が切れるようになった頃、勇樹が自分を指名してくれたことが嬉しくて、以降、プライベートでも交流するようになりました。 ある時、勇樹がエイサーの体験に行くというので、楽しそうなことを独り占めさせないぞ!と自分も付いて行ったのが僕とエイサーとの出会いです」と振り返る。「勇樹は、普通の人が思い付かないようなことで、どんどん攻める猪突猛進タイプです。保守派の僕がたまにブレーキかけてしまうぐらい、感性に長けています」と話す。以来、沖縄とエイサーに魅せられ続けている白木さんは、団員の意思と個性を尊重しながら太鼓を教え続け、「10年先も現役で、皆と大きなホールで自主公演を行い、観客席を満席にしたいです」と夢を追う。

代表として〜エイサーとのあゆみ〜

 代表を務める與那覇さんは、沖縄出身の両親の間に生まれた。貯めたアルバイト代で東京で歌手としての基礎を学び、1日6時間のボイストレーニングに励み、学生時代からクラブシンガーとしてステージに立った。やがて歌手活動を本格化させるが、病気によって断念。市原に戻った。 その際に、参加した友人の祝いの席で、歌うことを依頼される。 もうこれで歌手活動も最後だから…と1曲歌ったところ、会場で歌を聞いた人から貴方の歌を自分のエイサーに欲しいと涙ながらに望まれたそう。  こうして始まった、新しい人生のあらたな活動。與那覇さんの思いは一途で熱く、「エイサーは30歳で切り替わった自分の人生。沖縄のエイサーには欠かせない獅子も使いたいし、『2本バチ演舞』もやります。固定概念をくつがえしてこそ見える景色を、団員にもお客様にも見て楽しんで欲しい。 いつでも頭の中はエイサーのことを考えてるし、毎日年中無休です。エイサーするために仕事しています」と、笑顔を見せる。

 紅翔エイサー護光琉という団体名は、結成当時に感じたインスピレーションで、イメージを大切にする與那覇さんが名付けたもの。設立当初、団員みんなのオーラを熱く赤々と感じ、大好きな朱雀(赤い翼を広げた鳳凰)のように、紅く羽ばたこうという思いから紅翔。そして五井の「ご」、母の出身地の名護市の「護」、キラキラと輝く子どもたちの光を護りたい、琉球の風を吹かせたい、そんな思いから「護光琉」と命名した。

「団員たちは家族」という與那覇さんは、皆と苗字ではなく下の名前で呼びあっている。 当初12名だった団員も今は30名を超え、大人も子どもも自身の太鼓を持ち、一緒に頑張っている。 団員には子どもも多く個々に写真を撮っていいか尋ねると、笑顔で快諾し、すぐにかっこいいポーズを決めてくれる。 練習が楽しいからこれからも続けたいと話す。

「もしも学校へ行きたくないほど辛い日があった時、筋を通した上で、ここが自分の輝ける場所だと思うなら、太鼓と話しにおいでと言ってあげたい。子どもたちの拠り所になれたらいいなと思う」と與那覇さん。自分自身が挫けそうな時は海へ、波の音を聞きに行くと言う。「例えば自分が天に召されて、空の星になったとしても、団体の活動は終わってほしくない。次世代の団員でステージを続けてほしい」とどこまでもエイサー活動に思いを馳せる。

 現在、大晦日のカウントダウンステージでコラボをする、エジプト要素を多く含み、妖艶な舞をするベリーダンスチームとの練習の真っ只中だという。エジプトの曲で舞うエイサー、沖縄の曲を使うベリーダンス、互いがどんなふうに融合するのか…期待いっぱいのステージはSNS(Instagramは当日、YouTubeは後日)でも配信予定とのこと。また、団体では中学生以上の新規団員を募集中。興味のある方はお気軽に問い合わせを。

問合せ:紅翔エイサー護光琉
Tel.090・5773・9853

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