CITYLIFE 地域情報紙シティライフ ふるさとビジター館 自然探訪~お碗のようなキノコ・キツネノワン~ 2025.05.08 春に桑の木の下を探すと、1センチほどのお碗のようなキノコが地面から出ています。「狐の椀(キツネノワン)」というキノコです。その根元を見ると真っ黒の硬く変質した桑の実があります。このキノコは桑の実を栄養分として菌核(菌糸の塊)を作り、そこから発生するのです。 小さなお椀をそっと触ると、内側からホワンと白い胞子が出てきます。胞子は空中を漂い、今ちょうど咲いて実をつけ始めた桑の実に感染します。すると桑の実は黒く熟すことなく白く硬いまま下に落ち、キツネノワンが利用するのです。桑にとっては、タネは動物に種子散布してもらうために作った栄養たっぷりの実。それを落とされて菌に分解されてしまうのでは何の役にも立ちません。とんでもない迷惑行為ですね。 このキノコは江戸時代に坂本浩然の記した「菌譜」にも登場します。桑は養蚕に必要なため、昔から身近な樹木だったのでしょう。そういえば子供のころたくさんあった桑畑ですが、今は見ることがなくなりましたね。Yの字に似た地図記号も平成に廃止されたそうです。キツネノワンの胞子も「アタシどこに飛んでいったらいいの?」と困っているかもしれませんね。 (ナチュラリストネット/加藤恵美子) ◇ナチュラリストネット/自然を愛する仲間の集まりです。豊かな自然環境をいつまでも永く残したいと活動しています。 ◇加藤恵美子ブログ 千葉県の自然見~つけた♪ https://emikocho.blog.fc2.com/