CITYLIFE 地域情報紙シティライフ ふるさとビジター館 自然探訪~春一番のチョウ・ミヤマセセリ~ 2025.02.27 ミヤマセセリという早春だけに見られるチョウがいる。幼虫で越冬し、春一番に羽化して3月から4月だけ、成虫が丘陵地から低山地にかけての手入れされた日当たりのよい落葉広葉樹林に出現する。「スプリング・エフェメラル(春のはかない命)」の一つだ。「スプリング・エフェメラル」は、短い春の間だけ可憐な姿を披露し、あっという間にいなくなってしまうものを指す。一般にはカタクリ、フクジュソウなど植物が多いが、チョウなど広く昆虫にも適用される。ギフチョウが有名だが房総半島には生息していないので、ミヤマセセリが房総での一種とされる。 早春の穏やかな晴れの日、ヒラヒラと林内を舞い、落ち葉や落枝に羽を開いて留まり、たっぷりと日光を浴びる姿をみかける。羽を広げると40㎜前後、羽の表面は茶褐色で、前羽に紫灰色の樹皮模様があり、後羽の外半部に黄橙色の小斑が多数ある美しい蝶である。コナラ、クヌギなどの食樹の若芽基部付近や葉の裏に産卵。5月に幼虫となり、食樹の葉を折り返して巣を作り、幼虫のまま落ち葉の中で越冬する。短い成虫期間に、春のまばゆい光を満喫するように舞う姿は印象的だ。 千葉県では重要保護生物に指定。耕作放棄により森林が荒れることで、生息環境が著しく悪化しているためと言われている。里山地域の高齢化問題もあり、重い課題であるが、人と自然の共存に何らかの方策を考えていきたいものだ。 (ナチュラリストネット/岡嘉弘) ◇ナチュラリストネット/自然を愛する仲間の集まりです。豊かな自然環境をいつまでも永く残したいと活動しています。 Tel.080・5183・9684(野坂)