千葉聾学校野球部~第72回関東聾学校野球大会優勝!!~【千葉市】

 第72回関東聾学校野球大会が、7月31日~8月2日、流山市の京和ガスベースボールパークにて開催された。県立千葉聾学校野球部は強豪との3戦を戦い抜き、7年ぶりの優勝を果たした。藤田正樹監督は「選手たちは誰かを頼るのではなく、それぞれが高い意識を持ち、互いにカバーしあい、それが強さとなりました」と話す。栄冠を勝ち取った選手たちの顔には大輪の笑顔の花が咲いた。

先輩の悔し涙

 千葉聾学校(千葉市緑区)の野球部(軟式)は1960年の創部。今年8月時点で部員は高校3年4名、2年3名、1年6名の13名だ。選手たちは補聴器や人工内耳を付けプレーする。プレー中のとっさの判断を言葉では伝えにくいため、あらゆる状況に対応できるよう、日頃から1つ1つの動きを繰り返し練習し、選手同士の綿密な打ち合わせを欠かさない。

 昨年コロナ禍を経て3年ぶりに開催された第71回大会で、千葉聾は初戦敗退。「高3の先輩の流した涙が忘れられず、私達の代で優勝するという強い決意で1年間臨んできた」と話すのは、キャプテンの小林隆太選手(3年)。小坂真司選手(3年)は、「コロナで試合がつぶれ、参加も出来ず悔しがっていた先輩たちに、優勝して喜んでもらいたくて全力を尽くしてきた」。

 大会第1戦の相手は、筑波大学附属聴覚特別支援学校(市川市)。1年生バッテリーの大塚雄太投手と平野亜冴飛捕手は大会前、藤田監督に声を掛けられた。「1年生に背番号1、2番を渡すのは初めて。2人に任せる。後ろは先輩たちが守ってくれる」。大塚選手が先発し、終盤は長田陽斗選手(2年)が抑える。攻撃では、対戦が決まった日から、相手方の球速130㎞超の大会№1投手攻略のため、速球を打つ練習を重ねてきた。試合本番、1回裏千葉聾の攻撃、先頭打者は長田選手。「1番バッターの仕事としてファウルでねばり、相手に10球ほど投げさせることができた」。藤田監督は「これを見た選手たちは『バットにあてられる、これはいける』と自信を持ち、チームはのっていきました」と話す。初戦は9対2の7回コールドで突破した。ライトを守った廣部風馬選手(1年)は「しっかりとバントがきめられてうれしかった」。ベンチで応援していた栗山蓮選手(1年)は「チームを信じて人一倍声を出していた」と振り返る。

頂点に立つ

大塚雄太投手

 2日目準決勝の相手は、三校連合(都立立川学園・神奈川県立平塚ろう学校・埼玉県立坂戸ろう学園)。昨年の優勝チームだが、第1戦で勢いづいた千葉聾は3回終了時で9対1の大差をつけていた。4回表、千葉聾の攻撃終了後、試合は雷雨中断に。3時間もの中断後再開した試合は流れが変わり、三校連合の追い上げが始まる。監督が「普段はエラーはしない」というサード・黒下来偉夢選手(2年)は、「7回に連続でエラーをしてしまい、4点とられてあせりました」と思い返す。試合終盤にライトを守った馬場航世選手(2年)は、「緊張していた。でもとられた点は取り返せばいいと言い聞かせていた」。4回裏からマウンドに上がった長田選手は、「2点差になって周りが見えない状態だったが、みんなが声を掛けてくれた」と、最後は自力で三振を奪い、時間規定により7回で試合終了。中断を含め6時間に及ぶ試合を11対9で制した。

 決勝で対するは、優勝候補の都立中央ろう学校。1回表、守備についた選手たちの動きはぎこちなく、スタンドの応援団はハラハラしていた。中央ろうは3年生が中学時代の試合で完敗した相手。中央ろうの1、2戦を観て「勝機は十分にある」と説明する監督の言葉を、選手たちはそのまま飲み込むことができずにいた。しかし、初回にノーアウト満塁で迎えたピンチを1点に抑え、その裏2点を返し逆転。同点打を放った友田悠翔選手(1年)は、「先制点をとられ、必ず取り返すつもりだった」と話す。チームは本来の積極的なプレーを取り戻し、8対1で決勝戦をものにした。初の完投勝利を上げた大塚投手は「野球が楽しくて疲れを感じなかった」。2人の投手をリードし続けた平野捕手は「きつかったが、やりがいがあった」と笑う。

藤田監督の胴上げ

 山中彪太郎選手(1年)は、父の正和さんも同校野球部の卒業生で第42回大会で優勝。親子2代で栄冠を手にした。「三振をとって優勝した場面はうれしくて忘れられない」。キャプテンの小林選手は、「決勝で会おう」と約束していた中央ろうの中学からのライバルと闘い、健闘をたたえ合った。時田晃希選手(3年)は、監督の「信用している」という言葉に応え、三塁コーチャーや伝令として試合を支えた。「最高学年で最後の大会で優勝できてうれしい。声援がすごくて感動した」。副キャプテンの太田龍人選手(3年)は、「仲間を信じ、自分のすべきことに集中できた。野球を教えてくださった先生方、応援してくださった方々には感謝しかありません」。千葉聾野球部の歴史と伝統に培われた13人のチーム。胸には金メダルが光っている。

 

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