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うまれかわりの旅 いちはらと出羽三山信仰 ~12/14(日)まで開催 市原歴史博物館~【市原市】

【写真】八幡敬愛講の行の様子

 市原市能満の市原歴史博物館にて、令和7年度特別展『うまれかわりの旅~いちはらと出羽三山信仰~』が、12/14㈰まで開催されている。出羽三山とは、山形県の中央に位置する羽黒山、月山、湯殿山の総称で、日本を代表する山岳信仰の霊場の1つ。江戸時代に、三山を巡ることが『うまれかわりの旅』として庶民の間で広まり、『西の伊勢参り、東の奥参り』と称されるほど盛んになった。出羽三山信仰は、江戸時代初めに市原へも伝わり、『三山講』などと呼ばれる地域の『講』により今日まで連綿と受け継がれてきた。同展では数々の貴重な史料を基に、市原における出羽三山信仰の400年の歴史を紐解いている。

市原に息づく信仰の心

 出羽三山信仰では、羽黒山は現世の幸せを祈る『現在』、月山は死後の安楽と往生を祈る『過去』、湯殿山は生まれかわりを祈る『未来』と見立て、この三山を巡礼することは死と再生をたどる『うまれかわりの旅』といわれてきた。この信仰が市原に伝わったのは、羽黒山伏が関東で布教を始めた江戸時代初期とされる。千葉は他県よりも出羽三山信仰が篤い土地といわれ、とりわけ市原で信仰が盛んなのは、市原に真言宗の寺院が多く、真言系の湯殿山を中心とした出羽三山信仰を受け入れやすかったからと考えられる。
 市原歴史博物館では、令和6~7年度に市民活動団体『ふるさと市原をつなぐ連絡会』と協働し、市内150以上の三山講や地区を対象に、現在の活動状況についてアンケート調査を実施。106講で活動中との回答があったものの、メンバーの高齢化や人々のライフスタイルの変化により、今後、講の存続に危機感があるとの声も多く寄せられた。同館学芸員の西聡子さんは、「後継者不足など、時代と共に変化の時期である今だからこそ、400年にわたる信仰の足跡を振り返り、見つめなおしたいと本展を企画しました」と、説明する。

学芸員・西聡子さん

 

『うまれかわりの旅』に出発!

「会場入り口で、当展特製の往来手形とたびまもり、御朱印帳風スタンプ帳を手に取りお進みください。出羽三山と市原の風景に触れながら、うまれかわりの旅を疑似体験していただけます」と、西さん。『うまれかわりの旅スタンプラリー』では、7カ所のポイントでスタンプを集めると記念品がプレゼントされる(先着2500名)。
 会場では、出羽三山の説明に始まり、江戸時代の旅の行程や、講と山伏の固い結びつき、講の風習と現在の姿、市原市内に140基以上ある出羽三山供養塚などにつき細かに解説されている。「宿坊の宿泊名簿を集計し、市原からの参拝者数をグラフに表しました。湯殿山開山のご縁年の丑年に飛びぬけて数が多かったり、昭和の高度経済成長期に飛躍的に数が増えたりと、参拝者の数から時代背景が浮かび上がりました」
 展示品では、出羽三山歴史博物館が所蔵する重要文化財の銅鏡が目を引く。羽黒山出羽三山神社前の御手洗池(みたらしいけ)に供物として投げ入れられたもので、池の工事により出土したものだ。おおよそ平安時代から江戸時代に制作されたものとされる。そのほか、都市開発のため発掘された市内供養塚の出土品、解散した講の地域住民が大切に保管していた信仰の品々、参拝記念に奉納された絵馬など、多くの品が人々の信仰の心と流れた時間を語るかのように陳列されている。

三山講行人奉納大絵馬(分目地区雷神社所蔵)

 都内から訪れた2人連れの女性は、「伊勢参りは知っていましたが、三山信仰も江戸時代から盛んだったとは驚きです」「出羽三山へはバスツアーで行ったことがありますが、40日も掛けて歩いて行っていたとはびっくりしました」と、熱心に展示に見入っていた。観覧に訪れていた元市原市学芸員の田中清美さんは、「よく調べられていて、山形と市原双方の史料も豊富で素晴らしい展示でした。私自身も三山講で8回ほど登拝していますが、美しい景色も相まって得難い経験でした」と話した。
 西さんは、「市原に根付いた三山信仰の歴史を感じとっていただきたい。三山講に光を当てることで、今後の地域の繋がりの在り方を考えるヒントになればとの思いもあります。ぜひ会場にお越しください」。毎週土曜11時半~12時は、館職員・アイミュージアムサポーターによる展示解説会を開催(特別展の観覧券要)。そのほか、県指定文化財『大塚ばやし』の実演イベント、講演会、ワークショップなど開催予定。詳しくはHPか、問合せを。
 
問合せ:市原歴史博物館
Tel.0436・41・9344
HP:https://www.imuseum.jp/rekisi_museum/tokubetsu/umarekawari/1481.html

・開館時間:9時~17時(最終入館16時半)
・休館日:月曜日(祝日の場合は翌平日)
・特別展観覧料:一般600円、高校生500円、中学生以下無料

・実演展示『知られざる出羽三山信仰の世界』
 大塚ばやし(県指定文化財)の実演やトークイベント
 11/23(祝) 13時半~15時半 歴史体験館(特別展の観覧券要)

・特別講演会『なぜ出羽三山を目指すのか』
 12/7(日) 13時~16時半 いちはら子ども未来館(weほーる)3階多目的ホール 
 講演1『山岳信仰の山々とその遺宝』
 講演2『市原市内の出羽三山信仰』
 申込は当日12時半から会場受付にて 無料