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人と自然と文化がゆるやかにつながる場~田んぼの中の小さな映画館 もりのこや~【睦沢町】

敷地入口にて、林さんと映画館もりのこやの木の看板

【写真】敷地入口にて、林さんと映画館の木の看板

 睦沢町上之郷にある小さな映画館『もりのこや』。田んぼの中の古民家を改修し、今年5月にオープンした。『もりのこや』が掲げるコンセプトは『呼吸ができる映画館』。木の温もりを感じる空間で映画を鑑賞し、ロビーではランチやコーヒーを楽しみながら、居合わせたほかの観客とも映画の話に花が咲く。館長の林京子さんは「考える映画も、楽しく元気になれる映画も、どちらも大切にしながら人と自然と文化がゆるやかにつながる場をめざしています」と話す。監督や出演者の生の声が聴けるトークイベントも積極的に開催している。

映画館のつくり方

 林京子さんは東京都渋谷区の出身で、映像編集の仕事をしていた夫の佳秀さんと睦沢の地を選び、2008年に移住した。都心との二拠点生活から始まり、自然の懐の深さに魅了され、この土地にしっかりと根を張ることとなった。50才で若年性アルツハイマー型認知症と診断されていた佳秀さんは、自然の中で過ごすことで病状の進行を遅らせることができたものの、2021年からは施設に暮らしている。自宅での介護と施設に送り出すまでの家族の苦悶の日々は、フジテレビ系ドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』で放送された。
 2024年、かねて畳や木の香りのする家がほしいと願っていた京子さんは古民家を購入する。改修を進めていた2025年冬、後にシアターとなる部屋の天井板がすべて外され梁がむき出しの状態になると、「今ならどんな配線でもできるよ」と業者が一言。思案の末、京子さんは「映画館をつくろう」と決心する。どうして映画館だったのか。きっかけの1つは、以前旅行で訪れた佐渡島のミニシアター『ガシマシネマ』だ。佐渡金山の元鉱山住宅を改装した映画館を見て、「これで映画館できちゃうの?いいな」と思っていた。睦沢に引っ越してからできた大好きな友人も、きっかけを与えてくれていた。その友人の誘いで、睦沢町の公民館などで映画上映会を行うグループに加わり活動していた。そして、佳秀さんの存在。「映像関係の仕事をしていた佳秀さんが元気であれば、一番やりたいことだったのでは?」と、ふと気付いた。思い起こせば大切な人たちと映画館がつながっていて、「私、映画館をやることになっていたんだ」と京子さんの胸にストンと落ちた。
 いざ始めてみると、「映画館のつくり方はどこにも書かれていなかった。ずぶの素人が右も左もわからない状態でした」。飛び込みで配給会社を訪ねたり、保健所に『興行場営業許可』を申請したり、開館までの約13カ月で膨大な量の作業を1つ1つこなした。保健所の許可が下りたのは、なんとオープン前日の4月30日だった。

和室のシアター

この先もずっと

 5月1日のオープンには佳秀さんも施設から訪れ、協力してくれた家族、友人らが集まり、にぎやかなセレモニーが開かれた。シアターは16畳ほどの広さに、定員が38名。座椅子と座布団が並び、床に座りづらい人のために椅子席も用意されている。特に上映環境にはこだわった。「小さな空間だからこそ音が近く、映画の世界に自然と包まれるような体験を大切にしている。プロに依頼し、最低限の予算でいい音を実現してもらいました」。庭に面した20畳ほどの和室ロビーは、食事・喫茶のみでも利用できる。映画館ならではのポップコーンなど軽食はシアターでも飲食可能。日替わりの『まかない飯』は、野菜たっぷりのワンプレート。「素材はなるべく体にやさしいものを選んでいます」。オープン当時から常連の越盟子さんは、「ここではほかで観られないような中身のある映画が観られます。上映後、同じ映画を観た方と交流もできるすごく貴重な場だと感謝しています。ランチもコーヒーも安くておいしい」。京子さんも開館以来、観客の言葉に励まされている。「お客様から『映画すごくよかった』『この映画を選んでくれてありがとう』と言っていただいたり、拍手をいただいたりすると、監督でもないのにうれしいんです」と目を細める。

オープンの日の京子さんと佳秀さん

『もりのこや』の『もり』は、森、守、盛などいろいろな漢字が当てられるようひらがなにした。訪れる人にとっていろいろな『場』でありたいとの願いが込められている。開館から5か月。実のところ観客がひとりも来なかった日もあったが、口コミで訪れる人も増えてきた。「来られた方はみんな喜んで帰ってくださる。とにかく続けなきゃ。『睦沢と言えばもりのこやのあるところね』と言われるようになりたい」と京子さんは前向きだ。「道の駅には温泉もあります。ぜひドライブがてらお出かけください」。上映作品・スケジュールは、HP・インスタグラムで確認、または問合せを。席数に限りがあるので予約がおすすめ。

問合せ:もりのこや
長生郡睦沢町上之郷1906
Tel.0475・36・3565

庭に面した開放的なロビー
まかない飯

庭に面した開放的なロビー(左)
まかない飯

・料金:大人1本1400円、同日2本2500円
    高校生以下・障害者1本1000円、同日2本1500円
    3歳未満無料
・支払い:現金のみ
・定休日:火曜・水曜・毎月10日
・バス停『道の駅つどいの郷むつざわ』(茂原駅南口発着)より徒歩10分

【トークイベント】
・料金:映画鑑賞料のみ
・『身土不二』日本一の学校給食と有機農業 安孫子亘監督
 10/8㈭14時からの映画上映後
・『世界一の夕陽と生きる』金髙謙二監督
 10/17㈯15時からの映画上映後

HP:https://morinokoya.jp/
Insta:https://www.instagram.com/morinokoyacinema/

トークイベント

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