養老川に浮かんだ川船 オブジェとして設置

 昔の養老川は、全体的に川幅がもっと広く、上中流域の産物(米・麦・炭・薪・木材など)を川船で積み下がり、河口の荷揚げ場で積み替えられて、江戸・東京方面に運ばれていた。帰りの船荷には生活日用雑貨が積み込まれ、川船は人々の生活を支える物流運送の中心だった。一艘には米俵40俵、2艘1組で80俵程が積めたらしい。最盛期には200艘近い船が上下し、流域には河岸と呼ばれた荷さばき地が散在していた。沢山の船が『舟溜まり』に係留され、船頭や川子として働く舟運作業従事者で賑わっていた。
 川船の操船は竹竿で、船頭と川子がペアを組み、2艘を結び合って1艘にし、最低4人単位で行われていた。彼らはプライドを持って舟運の仕事をし、川の氾濫、冬の寒さやひもじさなど、過酷な労働環境にも耐え抜いていたそうだ。なかでも良い喉で『養老川船唄』が上手く、操船技術自慢の者は、荷主が手離さず、たいそうモテたという。しかし、大正14年に開通した小湊鉄道の五井~里見区間と、その後の自動車の普及により、養老川での川船の往来は途絶えた。
 平成28年春、地域ボランティアグループ『桜さんさん会』では、芸術的オブジェとして養老川の川船を選定、設置を決めた。市内在住の和船研究家の厚意により、残っていた写真から類推、他水域川船などとも推測、比較して、船型、細部仕様が決められた。同じく市内在住の大工さんの協力を得て、工場が川船復元制作現場となった。船は長さ6m、幅1m20㎝、深さ27㎝、重さ200㎏。材料は水に強く設計強度確保しやすい、杉の赤身部分。復元作業は会の有志数名ができる限り手助けし、約3カ月で完成した。
 市原アート×ミックス2017では、旧白鳥小学校の会場にこの川船の模型が展示され、人気を集めた。5月27日には、二日市場下流の小湊鉄道第1養老川橋梁の下で、会員2人の竹竿に操られ、見事に川面に浮かんだ。4~5名が乗船しても水漏れなくスムーズに行き来し、河岸に集まった見物者から大きな拍手と歓声で迎えられた。参加者は代わるがわる乗船して、川船のスリルを満喫した。
 会の代表・河内昌蔵は、「この川船は養老川の暮らしの歴史的意義ある芸術的オブジェとして二日市場橋のたもと、喫茶店前の空き地に永久設置されます。実物の半分の模型ですが、和船研究家と大工のお二人のご協力が無ければ、貴重な復元はできなかった。感謝です。より多くの地域の方たちの目に触れて、昔の流域の人々の暮らしを偲んでもらいたい。養老川の歴史を垣間見て、知って頂きたいですね」と穏やかに話す。
 『桜さんさん会』は芸術的オブジェ選定設置と養老川中流域の桜並木つくりを二本柱とした文化と芸術の里つくりで活動している。現在107名が参加。会員は随時募集中。

問合せ 会長・河内昌蔵
TEL 0436・36・8573
(文責・桜さんさん会 影正一夫)

関連記事

今週の地域情報紙シティライフ


今週のシティライフ掲載記事

  1. 当ホームページは、2/17に新ホームページのオープン予定のため、情報掲載が1/31までとなります。 2/17までに開催するイベント等…
  2.  昭和を代表するスター「石原裕次郎」は今年、生誕90年。映画やドラマで大活躍し、歌手としてもヒット曲多数。誰からも愛された「裕ちゃん」の魅…
  3.  鉄道写真愛好家の皆さんへお知らせです。今年6月5日(木)~6月10日(火)に開催予定の『小湊鐵道を撮る仲間たち展』に写真を出展いただける…
  4.  今年は小湊鐵道開業100周年。これを記念し、アートによる地域づくりの拠点である市原湖畔美術館は、小湊鐵道とコラボプロジェクトを進行中。小…
  5.  成田山公園で毎年行われる冬のイベント「成田の梅まつり」。会場は成田山新勝寺大本堂の奥、16万5000平方メートルもの広大な公園。四季折々…
  6. 【写真】パキスタン・カラチの整備途中の農場で、働く青年たちと田中さん(前列右端)      36年間の市議会議員のあと、パキス…
  7.     ◆一席 記念日を遅れて祝い根にもたれ  一宮町 黒猫胡桃     ・老プランあまく見積り火の車  茂原市 道譯賢…
  8. 【写真】講演する家田さん      昨年12月、市原市市民会館で開催された『令和6年度市原市人権・男女共同参画フォーラム』。男…
  9. 【写真】はにわ博物館展示室の姫塚埴輪        昨年8月、千葉県殿塚古墳・姫塚古墳出土埴輪(総数48点うち殿塚古墳30点、…
  10. シティライフ編集室では、公式Instagramを開設しています。 千葉県内、市原、茂原、東金、長生、夷隅等、中房総エリアを中心に長年地域に…

ピックアップ記事

  1. 当ホームページは、2/17に新ホームページのオープン予定のため、情報掲載が1/31までとなります。 2/17までに開催するイベント等…

スタッフブログ

ページ上部へ戻る