祝受賞 みんなおいでよ 紙敷塾

 山林のほとんどが水源涵養保安林に指定されている自然豊かな大多喜町紙敷地区。昔から日参旗を各戸で順番に回し、地区の神明(しんめい)神社に毎日お参りする習慣があり、民間信仰の集まり千部講、十三日講などが今も続く。住民同士のつながりが強い地域だが、人口259人(平成22年)81世帯のうち、10世帯は一人暮らしの高齢者だ。
 『いきいきサロン紙敷塾』のスタートは「みんなが集まる場がなくなると寂しい」という声のあった紙敷老人クラブの解散から。「平成25年、とりあえずやってみようとはじまった」と話すのは代表の君塚良信さん(66)。塾だから毎月19日に集まると決め、試行錯誤をしながら今日まで来た。塾生43名うち60代の若手ボランティアは11名。ボランティアを除いた塾生の平均年齢は80歳だ。
 「少子高齢化でさびれていく地域を何とかしたい。塾を心のオアシスにしたい」との思いから、紙敷生活改善センターで開かれる食事会で交流することをメインに血管年齢の若返り、子どもとの交流、バスによる町外学習、郷土史など多岐にわたる講座を開いている。紙敷区より委託を受けて千部講も年4回行う。「昔からある暮らしを生かした新たなコミュニティづくりを目指し、みんながやりたいことを実現する。楽しく集って、少しだけ地域貢献したい」と君塚さん。細かい決まりごとはなく、ボランティアも出来る範囲で手伝うので無理もない。
 取材日も男女40名近くが集まり、千部講のあと昼食を囲んで、漬物の作り方や野菜についておしゃべりしていた。最高齢の91歳の男性は「みんなに会える」と毎月楽しみにしている。紙敷に別荘を持つ船橋在住の夫婦や「楽しいから」と誘われた区外の女性も同席する。70代の女性が「わき腹が締まった」と嬉しそうに話すポールウオーキングは塾の勉強会の賜物だ。いくつものグループがポールを持ち地区を歩いているらしい。午後からは県薬物乱用防止指導員協議会の原田隆一薬剤師による上手な薬の飲み方などの講話だった。
 塾生はただ集まっているだけではない。麻生喜美恵さん、君塚さち子さん、同姓同名の君塚さんの妻さち子さんなどボランティアらは地域活性化に向けた先進的な取り組みをする長野県などにでかけ、研究する。塾には漬物や料理の名人がいるので、それぞれの経験や得意分野を生かし、「地域の特産品のブランド化や食堂開店もしたい」と紙敷の可能性を探っている。
 今年1月、紙敷塾は『ちばSSKプロジェクト高齢者支え合い活動奨励賞』を受賞した。『ちばSSKプロジェクト』とは千葉県高齢者孤立化防止活動でSSKは「しない・させない・孤立化」の略。受賞式に出席した麻生さんは「感激し、もっと紙敷をよくしたいと思った」と希望に燃えていた。

関連記事

今週の地域情報紙シティライフ


今週のシティライフ掲載記事

  1. 当ホームページは、2/17に新ホームページのオープン予定のため、情報掲載が1/31までとなります。 2/17までに開催するイベント等…
  2.  昭和を代表するスター「石原裕次郎」は今年、生誕90年。映画やドラマで大活躍し、歌手としてもヒット曲多数。誰からも愛された「裕ちゃん」の魅…
  3.  鉄道写真愛好家の皆さんへお知らせです。今年6月5日(木)~6月10日(火)に開催予定の『小湊鐵道を撮る仲間たち展』に写真を出展いただける…
  4.  今年は小湊鐵道開業100周年。これを記念し、アートによる地域づくりの拠点である市原湖畔美術館は、小湊鐵道とコラボプロジェクトを進行中。小…
  5.  成田山公園で毎年行われる冬のイベント「成田の梅まつり」。会場は成田山新勝寺大本堂の奥、16万5000平方メートルもの広大な公園。四季折々…
  6. 【写真】パキスタン・カラチの整備途中の農場で、働く青年たちと田中さん(前列右端)      36年間の市議会議員のあと、パキス…
  7.     ◆一席 記念日を遅れて祝い根にもたれ  一宮町 黒猫胡桃     ・老プランあまく見積り火の車  茂原市 道譯賢…
  8. 【写真】講演する家田さん      昨年12月、市原市市民会館で開催された『令和6年度市原市人権・男女共同参画フォーラム』。男…
  9. 【写真】はにわ博物館展示室の姫塚埴輪        昨年8月、千葉県殿塚古墳・姫塚古墳出土埴輪(総数48点うち殿塚古墳30点、…
  10. シティライフ編集室では、公式Instagramを開設しています。 千葉県内、市原、茂原、東金、長生、夷隅等、中房総エリアを中心に長年地域に…

ピックアップ記事

  1. 当ホームページは、2/17に新ホームページのオープン予定のため、情報掲載が1/31までとなります。 2/17までに開催するイベント等…

スタッフブログ

ページ上部へ戻る