音楽は国境を越える

音楽は国境を越える
自分にしか出せない音を求めて チェリスト 上村 文乃さん

 市原市ちはら台出身のチェロ奏者である上村文乃さんは22歳。現在桐朋学園大学ソリストディプロマコースの4年生で、この春卒業を迎え新たな一歩を踏み出すことになる。上村さんがチェロを始めたのは6歳の時。3歳からピアノも学んでいたが、マイペースな性格がおだやかな音色を奏でるチェロに合うだろうと考えた両親の勧めがきっかけ。「教室レッスンの他に自宅での練習は長時間に及んだ。母は時に厳しく、私の演奏の録音をして指摘したりしたが、その分熱心にサポートをしてくれた。小4から中3までの約6年間、月3回は都内へレッスンに行くのに付き添ってくれた。コンクールを意識したのも、目標を持ったうえで学んだ方が良いと母に勧められたから」と上村さんは穏やかに話す。
 頭角を現したのは、その後まもなく。第2回泉の森ジュニアチェロコンクール小学生部門にて銀賞を獲得したのをはじめ、第4回ルーマニア国際音楽コンクール弦楽部門1位とルーマニア大使館賞受賞、第65回全日本学生音楽コンクール大学の部1位と日本放送協会賞受賞など多数の受賞歴や、テレビ朝日『題名のない音楽会』やNHK―FM『クラシックサロン』などへの出演経験を持つ。2009年第30回霧島国際音楽祭に奨学生として参加し、霧島国際音楽賞を受賞。
 昨年から音楽事務所である株式会社ジャパン・アーツに所属し、演奏会やリサイタルなど精力的に活動中。「子どもの頃は、舞台の上でも緊張しなかった。成果を求めることも少なく、なにより練習したものを弾ききることだけがすべてだった」と話す上村さんが大人へと変化したのはいつからだろう。「10代は勢いで走っていたものが、20代になってしっかりと根を張りたいと思うようになった。自分の音に愛着を持ち、それを聴いてもらうことに意義がある。書く文字が一人ひとり違うように、音も表現の仕方が様々。だからこそ、自分の曲への解釈に間違いがないか疑問を感じることも多い」と続け、ふんわりと微笑んだ。
 音楽と真剣に向き合っているからこそ悩んだ時期もある。コンクールによっては、審査員から講評を頂くことができ、いろいろと指摘されることも多かった。しかし、上村さんは「当時は言われている意味も分からなかった。でも、そんなことも自身の演奏を客観的に振り返る技術を身につける練習になっていたと思う」と前向きだ。そんな時は、自分とは異なる楽器を志す友人のアドバイスを受けながら、バリエーションを広げる努力をしたという。
 また、落ち着いた物腰からは想像しがたいほど好奇心も旺盛で、海外で飛行機の乗り換えでドバイを訪れた際でもチェロを手放さず、周囲に請われて市場の店先や木製の水上ボートで演奏をしたこともある。「チェロには毎日触れているし欠かせないパートナー。どこへでも一緒に行くし、練習をする時は一人でじっくりとチェロと向き合う。現在、好きな作曲家はシューベルトで、歌うような旋律が弾いていて気持ちがいい。派手さはないがふっと温かくなるし、親近感が湧く」と言うが、それはまるで上村さんの個性をうたっているようでもある。
 そんな上村さんは今年の秋にヨーロッパ留学へ旅立つ予定。「周囲の友達の卒業後の進路も様々。オーケストラ奏者やピアノの先生、音楽系の企業に進む子もいる。クラシックは元々ヨーロッパで生まれたもの。私はこれから、日本で感じることのできない本質的なものを、そこで生活をすることによって学びたい。そして音楽という1つの事を追求していくことで、もっと落ち着いて物事を見極められる威厳を持った人間になりたい。今は少しのことでも動揺してしまう。舞台の上で演奏している時だけでなく、一歩そこから離れた際にも、すっと背筋を伸ばして堂々としていられる人になりたい」と確かな目標を掲げる。
 秋まではソロ、室内楽等の演奏会や語学の勉強に勤しむという。彼女の音が変化するとき、きっとまた少し違った意味で成長したその姿を見ることができるのかもしれない。
問合せ 株式会社ジャパン・アーツ 
TEL 03・3499・8091

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