自然との共存が森を生かし、アートの原点をつくる

自然との共存が森を生かし、アートの原点をつくる

 9月29日(日)、養老渓谷にあるアートハウスあそうばらの谷で白井忠俊さんと鶴岡清次さんによるギャラリートークが行われた。アートあそうばらの谷では9月14日から10月14日まで『白井忠俊展―タツハシラ』が開催され、今ギャラリートークでは画家である白井さんによる自身の作品解説と、市原米沢の森を考える会の代表である鶴岡さんにより里山保全について語られた。
「展覧会タイトル『タツハシラ』とは日本神話における国産み・子作りの場面を表します。そのイメージの原泉には生物の生殖行動が関わっていると考えられます。作品が生まれる原点は市内米沢の森になります。樹木に絡みつく藤蔓を見て蛇を連想しました。ツルは2本に絡まり捻るとナワになります。ナワの二重螺旋は蛇の交尾と似ています。注連縄はへびの交尾を表し日本には原始蛇信仰が存在したと考えられます。縄文土器の紋様は蛇を表していると私は考えます」と白井さんが説明すると、前方に設置されたスライドに蛇、蔓、縄文土器と写真が表示されていく。
 そして「ツタ、ツル、ツナなど植物の意味や使われ方、同じ音を調べてみた。蔦は伝わる、つたって歩くなど。蔓は吊す、綱は繋ぐ。同じ音の動詞は状況が驚くほどに一致する、これを見てもヤマトコトバは祖先が森の風景から植物を観察して生み出した言葉だと思う」と持論を続けた。白井さんは様々な視点から独自のアートを生み出している。190センチもある円筒に描かれた蛇に正面から見つめられると、思わず足が竦んでしまう。訪れた人々も、くるくると円筒を回りながら蛇に魅入られていた。
 その後、第2部では鶴岡さんが「米沢の森は、観光スポットになると常々思っていた。会で活動を始めて10年になる。きっかけは1本の山桜だった。大きな太い幹の桜が手入れをされないばかりに咲かなくなっていたのだ。それを蘇らせようとした」と話す。外見が緑豊かに見えても、中に入れば蔦や山藤、竹に覆われ荒れている。「森は生きているからこそ人の手が入らなければならない」のだという。
『豊かで美しい森をアピールするには地域から』をモットーにしている鶴岡さんは、「国内外で自然環境の大切さが求められている。森の古道からは石仏が発見され、歴史と文化も根付いている里山。竹林などを整備することで地域振興、町おこしに繋がればいい。森の保全は地域と連携して共同整備していくことが求められている。今、再生利活用しなければ、千葉県南部地域は過疎化どころか限界集落へ繋がっていくことになるだろう」と警鐘を鳴らした。 (松丸)

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