ふるさとビジター館
鮮やかな黒の実 トキリマメ
寒さも深まったとある休日。里山には鮮やかなトキリマメの黒光りする実、ムラサキシキブやヤブムラサキの紫色の実、葉や花から柑橘系の独特な香りがするカントウカンアオイ、楊枝の材料になるクロモジなど、自然の色彩の豊かさに感動するほど美しい木の実や香り豊かな植物がありました。それらの中から今回はトキリマメについて書かせていただきます。
トキリマメは山野に生えるつる性の多年草で花の時期は7~9月です。タンキリマメとよく似ていますが、トキリマメは子葉がやや大きくて薄く、先端が急に細くなっています。子葉の幅はタンキリマメが中央より上が最も広く、トキリマメは下半分が最も広いです。また葉や茎の毛はタンキリマメより少なく、萼は萼筒より短いのも特徴です。
タンキリマメの名は種子を飲むと痰が切れるという俗説から来ていて、トキリマメよりよく知られているようです。トキリマメの名前の由来ははっきりしていません。観察に行ったときはほとんどの豆がはじけ、きれいな黒い種子がたくさん見えていました。赤色や黒色は鳥が「おいしそう」と思う色だそうです。
トキリマメは明るい雑木林の縁に生えています。そのため目に付きやすく身近な植物ですが、草刈り等によって刈られやすく無くなりやすい植物でもあります。里山は人の手によってつくられるものです。しかし、自然の山野と同じく植物や環境には役割があり植物は自然に住み分けをしています。久しぶりに訪れた里山は適度に手入れがされており素朴な美しさを見ることができました。
この里山を保全しているグループの一人の方から、里山は手入れをする際、外来種や下草などの刈るべき植物と刈らずに残して保全する植物を正確に判別すること、また自然の住み分けを邪魔しないように単一な環境にしないことが大切と学びました。私も里山の環境はとても好きですが、維持管理する大変さを改めて知りました。
ナチュラリストネット/岡島 亜純