リスクコミュニケーション
- 2014/1/31
- 市原版
化学の力で夢を形にする工場
洗剤の容器、お菓子の袋、DVD、自動車のバンパーや内装品など身近なプラスチックの基礎原料をつくる工場を見学する催しが行われた。市原市の臨海部の工場における化学物質の管理や環境保全について、理解を深めてもらいたいと昨年11月に市原市環境部が企画した講座である。小学生5名を含む27名の参加者がバスで訪問したのは市原市千種海岸にある三井化学株式会社市原工場。はじめに本事務所という建物で映像を見て説明を聞いた。
工場が生産しているのは主に原油を精製してできるナフサに熱や圧力を加えできるエチレンやプロピレンなどプラスチック製品の素材。そこからできる様々な用途の樹脂や化成品もつくる。ペレット状の素材はプラスチック加工工場などに運ばれ、成型したり、薄く延ばしたりすると私たちが普段手にする日用品などに生まれ変わる。地震に強いポリエチレン製ガス管、医療用点滴バッグ、ティーバッグの不織布になる製品もあるという。「化学物質とは水や塩などを含め、身の回りにあるもの全て。生活を便利で豊かにしてくれる一方、環境や人体への影響もある。調査研究をし、物質の危険性に注意しながら操業している」との話。自然環境を守るため工場排水は微生物の浄化作用によって無害化してから海に放流し、水質も定期的に調べている。「安全は全てに優先する」という方針のもとで災害や事故にも備え、消防車4台を持ち、専門の防災隊員を配置しているとのこと。津波や地震による災害対策も向上するように考えている。
工場関係者の案内でバスに乗り中核区域へ向かうと、広大な敷地内にパイプやタンクが複雑につながった銀色のプラント33棟が姿を現した。プラントの多くは4階建てのビルほどの大きさ。蒸気が出ていたり、霜がついている装置もある。ユーモアあふれる解説を聞きながら海に面した場所に出ると富士山やスカイツリーが見えた。岸壁にうず高く積み上げられていたのは太いホースのようなオイルフェンス。隣接する石油精製会社から運ばれる原料のナフサなどが海に流れ出した場合に備えているそうだ。製造過程で出るガスの有害物質を除去した水蒸気を出す紅白の煙突もそびえ立っていた。
見学後、小学校1年生の男の子から「石油がなくなったらどうするの」と素朴だが核心をつく質問があった。「使用済みプラスチックの再生も可能。石油に代る天然ガス、シェールガス、メタンハイドレートなどもある。さまざまな物質から化学の力でいろいろな製品にするのが私たちの仕事」との答え。地球の未来を守る研究開発もしている。父親と一緒に来た小学6年生の姉と3年生の弟は「環境のため工夫をしていた」、「想像とは違い緑がたくさんあり広かった」と驚いていた。60代の男性は「地震や公害対策を知ることができた」と少し安心した様子だった。市原市にある石油、化学、電力などの企業は千葉県と市とで国の法律以上に厳しい環境の保全に関する協定を結んでいる。