ふるさとビジター館

フジの蔓は下から左に巻き上がる

 若葉に輝いていた森が青々してくると、そろそろ紫色のフジが見られるようになる。ひっそりと隠れるかのようにしていた野性のフジが一斉に咲きだす眺めは壮大だ。
 大きいものは1メートルも垂れ下がるという総状花序は上から順に花開く。高い木に絡みつき、張り出した枝先から見えるのはほんの一部分。木の陰に隠れたところにもたくさん垂れ下がっている。
 フジ(藤:別名ノダフジ)はマメ科の木本でマメ亜科フジ属。花は長さ2センチほどの蝶形花。蜜のありかを教える蜜標という黄色のマークがある。虫たちをおびきよせ、受粉の手伝いをさせる虫媒花。花の近くに寄れば、ブンブン飛び回る羽音が聞こえる。やがてソラマメのサヤを平たくしたような豆果がぶら下がる。
 西日本には総状花序が20センチのヤマフジ(山藤:別名ノフジ)がある。よく似るが、簡単な見分け方は蔓の巻き上がり方。下から左に巻き上がるのがフジで、右に巻き上がるのがヤマフジ。例えばねじの場合、尖った方を上に太い方を下にすると、溝は下から右に巻き上がる。紅葉が始まる頃、フジのサヤの下を歩くと上の方でパチとかパキという音が聞こえることがある。サヤが爆ぜて種子を飛ばす音だ。
 フジは藤〇、〇藤など苗字や地名に付けられるほど古くから親しまれている。遠くの山に当たり前のようにフジの花が見られるのは、市原の自然が万葉の昔から豊かな証。大切にしていきたい。

ナチュラリストネット/野坂伸一郎

関連記事

今週の地域情報紙シティライフ


今週のシティライフ掲載記事

  1.  市原市は市制施行60周年を記念し、『エンジン01(ゼロワン)in市原』を2024年1月26日(金)~28日(日)に開催する。先月8月25日…
  2.  マザー牧場(富津市)では、ひと足早く秋先取りの絶景が登場。まきばエリア 『花の大斜面・東』にて、 2年目となる『コキア』が9月上旬より紅葉…
  3.  心ない行動や言葉が、人を追い詰め事件になるケースも多い昨今。この本『慈雨』の筆者・大木太枝(たえ)さんも、20数年前、愛する家族が他人の中…
  4.  9月30日(土)・10月1日(日)の2日間、上総更級公園や上総大路などで、『上総いちはら国府祭り』が4年ぶりに開催される(主催:上総いちは…
  5.  絵本作家の五味太郎さんが書いた本に『じょうぶな頭とかしこい体になるために』という本があります。「何をしたいか自分でもよくわからないんだ」と…
  6.  今回から前後編で、世界に名を轟かせた黒澤明監督に関するお話です。黒澤明:1910年(明治43年)3月23日生~1998年(平成10年)9月…
  7.  牛久石名坂1号墳跡は、市原市のほぼ中央に位置し、国道が縦横に走る養老川中域の標高37メートルの河岸段丘上にあります。周囲には大小の古墳が9…
  8.  8月21日から23日の3日間、野田市にある江崎グリコ株式会社の工場見学施設『グリコピアCHIBA』にて、小学生とその家族を対象としたワーク…
  9. シティライフ編集室では、公式Instagramを開設しています。 千葉県内、市原、茂原、東金、長生、夷隅等、中房総エリアを中心に長年地域に…

ピックアップ記事

  1.  9月30日(土)・10月1日(日)の2日間、上総更級公園や上総大路などで、『上総いちはら国府祭り』が4年ぶりに開催される(主催:上総いちは…

スタッフブログ

ページ上部へ戻る