梅ケ瀬で発見された巨大トドの化石

 4月16日、加茂公民館で『大人の社会科見学・梅ケ瀬トドの化石』の講演が行われた。講師は千葉県立中央博物館、主任上席研究員である伊左治鎭司さん。
 2012年5月、市原市朝生原の梅ケ瀬渓谷にある約90万年前の地層から、巨大な下顎骨化石が発見された。縦横それぞれ約10センチ、厚みが6センチの、薄茶色の混じった黒っぽい破片は遊歩道の下の河原に落ちていたという。5本の臼歯の歯槽と1本の犬歯の歯根も残っていた。なぜトドの仲間だと判ったのか。1本の歯が抜けたあとに1個の大きな穴ができるのは、ほ乳類ではクジラと鰭脚類だけ。だがクジラには犬歯がないことから、鰭脚類といえる。そして、あごの先端部が一番高さをもつことから、アシカ超科に属する。アシカ超科にはセイウチ科とアシカ科があるが、セイウチ科の下顎骨には犬歯がない。アシカ科の中ではトドに似るが、より大きい。よって、アシカ科に属する絶滅したトドの仲間だと判断した。この化石の大きさは現生トドの雄の最大個体と比較すると約1.5倍もあり、推定される約5メートルの体長は世界最大だ。 
 他にも、梅ケ瀬ではクジラの下顎やひれの中にある指の骨、黒く変色したマンモスの象牙などの化石が発見されている。「梅ケ瀬にはまだまだ化石があります。皆さんも発見できますよ。周りの石と比べて色が濃いことが多いです」と伊左治さん。
 幾多の地震が繰り返されてきた房総半島。巨大地震の際に発生した砂が堆積し、その上に泥、また砂がといったような地層の形成についての詳しい説明もあり、化石が埋もれている背景についても学ぶことができた。トドの化石のレプリカやクジラなどの実物の化石を手に、参加者たちは興味津々。「自分でも探しに行ってみます」と目を輝かせていた。

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