市原の巨木めぐり(東部・西部編)

写真上 上下諏訪神社のスダジイ

 梅雨の合間、初夏のような陽気となった6月15日(月)、『巨木めぐり』(市原市環境部主催)が開催された。同イベントは、「市原市内の巨木と、その周辺の植物等を観察し、自然保護の大切さを市民の皆様に伝えるため」と、平成4年から始められた。
 当日、午前9時過ぎに参加者29名を乗せたバスが集合場所の市役所を出発し、不入斗(いりやまず)にある小鷹(こたか)神社へ向かう。車中で資料が配られ、講師の紹介があり、班分けや注意事項等について担当職員が話しをした。講師は樹木医の鈴木輝征さんと小池英憲さん。
 今回まわるのは、市内東部・西部に位置する市原から姉崎地区の4カ所。市原市を「市原・五井・姉崎」、「三和・市津」、「南総・加茂」の3つのエリアに分け、毎年、順番にまわり、3年かけて市内の巨木を見学する。巨木とは、環境省が定義している基準では、地上から約1.3mの位置での幹周りが3m以上であること。
 午前中に小鷹神社と唐上堰周辺(椎津)へ、農業センターで昼食をとり、午後から上下諏訪神社(諏訪)、飯香岡八幡宮(八幡)をまわる。9時半、小鷹神社に到着。参加者は1班は鈴木さん、2班が小池さんと半数ずつに分かれ、スダジイの巨木並木が続く長い参道を歩く。講師の鈴木さんは「ここは無名の神社だが、これだけの常緑広葉樹林を参道に維持したのは珍しい」と話し、テレビで放送された『明治神宮不思議の森~100年の大実験』や月山・羽黒山を例にあげるなどして、参加者は、その軽妙かつ分かりやすい語り口に、興味深げに耳を傾けた。そして、樹皮が剥がれているのが特徴のアカガシ、幹の近くの根が地上に出て板状になった板根(ばんこん)や、高さ32m直径1.25mの御神木の杉の木を見学した。
 バスで移動して、姉崎運動広場へ。ここから歩いて唐上堰を目指す。里山が見下ろせる道から階段を降り、林縁(りんえん)と呼ばれる森林の縁沿いの畦道を歩く。林縁は森林内部に比べ、光がよく差し込むため、多くの植物の生育に適しているという。「あれが、コナラ、三つ葉アケビ、フジ、マテバシイ、ハコネウツギ、アカメガシワ…」と、次から次へと様々な木々を指し示す鈴木さん。更に行くと朴の木の林がスダジイに覆われつつあるのが見られた。その隣ではモヤシのような姿で林立する杉が。斜面も崩れている。
 光を好む杉等の陽樹(ようじゅ)と、その反対のスダジイ等の陰樹(いんじゅ)、また、斜面崩壊に関してなど今の里山が抱える問題にも触れた講師の話に、参加者は皆、その現実を目の当たりにして驚いた様子だった。その後、唐上堰の前を通り、溝腐(みぞくされ)病に罹った杉の林も見て、屋敷林が残る町並みを眺め、駐車場に戻った。
 昼食を済ませ、上下諏訪神社へ向かう。境内に諏訪台古墳群の9号、10号墳が保存されている。ここにある巨木、スダジイの堂々たる姿には圧倒される。樹高16m幹周り10m、樹齢800年と伝えられ、幹が数本に分かれている。見事な巨木と共に、参加者が一様に感心したのは参道がきれいだったこと。これは、氏子の皆さんが、訪ねてくる人のために歓迎の気持ちを込めて、草刈りや掃除をしたためと聞く。隣接する地には植樹された100本以上の桜の木があり、こちらの手入れも氏子の皆さんがしているそうだ。
 最後に見学したのは飯香岡八幡宮。県の天然記念物に指定されている同宮の夫婦銀杏は、樹高16m幹周り7.6mの推定樹齢1300年以上という古木でもある。 地上2.8mのところから二段に分かれ相対しているので夫婦銀杏と呼ばれるようになった。
 講師の小池さんは境内にあるサイカチの木の下にも参加者を案内し「これだけ大きいのは珍しい。枝にトゲがあり、マメ科の特徴である実の入ったサヤができ、これを水につけて揉むと、ぬめりと泡が出るので、昔は石鹸代わりに使っていた」と話した。更に、葉を一枚摘み取り1カ所切り込みを入れ、草履を作ってみせ、皆を感心させていた。
 参加者の皆さんは一様に「学ぶことの多い、でも楽しいイベントだった」、「身近な場所に、こんなに自然の豊かな所があるなんてと再認識させられた」、「あらためて巨木の魅力を実感した」と満足げだった。

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