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日本ミツバチで長南町に楽園を
- 2015/11/6
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『房総みつばち村』村長 小幡 安信 さん
長生郡長南町佐坪にある『房総みつばち村』では、2年前から『日本ミツバチの楽園プロジェクト』が始動している。同村の所有者で、プロジェクトリーダーの小幡安信さんは、「普段は農作業しているのですが、3年前にミツバチの巣箱を置いてみたら、すぐに入ってきたのが始まりです。日本ミツバチは経済性の関係から採算が取れないことがほとんどで、養蜂の多くは西洋ミツバチなのが現状です」と話す。
農薬散布の影響で、絶滅の危機にある日本ミツバチだが、現在『房総みつばち村』にある2つの巣箱で5千から1万の日本ミツバチが暮らしている。それを支えているのこそ、小幡さんをはじめ、7人のプロジェクトメンバーである。日本ミツバチの集め方は、おびき寄せるための蜜を少し塗って巣箱を置いておくこと。「毎年春に巣分かれするミツバチは、女王蜂が1匹の新しい女王蜂に自分の巣を譲って、半分の働き蜂を連れて新しい巣を作ります。そこが日本ミツバチの難しいところなのですが」と、小幡さんは少し楽しそうに笑う。
西洋ミツバチはある程度柔軟で、人工的に巣に入れることができる。だが、日本ミツバチは気難しく、こだわりが強い性質。一度入っても、その巣が気に入らなければ出て行ってしまう。さらに、「スズメバチが餌としてミツバチを食べに襲ってくるので守ったり、ハチノスツヅリガという蛾の幼虫であるスムシの駆除も必要です」と続けるが、同プロジェクトのモットーは『無農薬』であること。2ヘクタールの広大な土地にある『房総みつばち村』には梅、栗、ビワなどが植樹されている。取材日には、東京から無農薬農業に目を付けた吉田美香さんが訪れていた。「これから都内での出店を考えているのですが、そこで提供するバジルを、こちらから仕入れようと思っています。無農薬は身体に優しいですし、面白いプロジェクトですね」と吉田さん。
また、日本ミツバチを育てるのに欠かせないのは蜜源である。すでに様々な植物が存在しているが、「もっと多くの花を植えられるような計画を立てています。手伝ってくれる方がもっといたら、嬉しいですね」と話すのは、都内在住でプロジェクトメンバーの堀部洋保さん。「このプロジェクトは、ミツバチだけでなくもっと自然と関わろうという主旨があります。自然の学習を『楽農』、『遊農』と表現することがありますが、子ども達にとっても、ここの里山を生かした勉強の場として活用してもらいたい」と展望を明かした。
この日は、みんなが集える場所として竹を使った『インディアンテント』を構築した。『農業』と一言で言ってしまうと、人は集まりにくい。だが、少しずつ内容を拡大してくことで、埼玉や都内から手伝いに来てくれるメンバーが増えてきた。「普段は全く違う環境にいる人たちが、同じ所で親しくできるのは嬉しいです」と話す小幡さんの目標は、「『みつばち村』をさらに大きくして蜂蜜の生産性を増やすこと」だという。
現在は、1年に1回の採蜜で、約2Lがとれる。西洋ミツバチは、1、2種類の花から単花蜜を作るが、日本ミツバチは真逆。様々な花々から蜜を集め百花蜜と呼ばれ、濃厚かつ数百種類のアミノ酸を含んでいるので身体に良いとされている。結果、少量でも高額の商品になるのだが、今はまだ充分な量を採蜜することが叶わない。蜜を増やすためには、日本ミツバチの数を集める必要がある。
採蜜と聞いて想像するのは、黒い布を頭からかぶり、ミツバチが顔の周りを飛び回る中で巣箱を開けるシーンだが、それは西洋ミツバチの話。日本ミツバチは温厚で、面布で顔を覆う必要はない。「場合によっては、手乗りも可能!」だとか。
堀部さんも、「外部から来た人間も加わると、地元の方に受け入れてもらうには時間がかかるかもしれない。ですが、あまり保守的にならずに早く溶け込んでいきたいです。土地の有効活用を考えながら、蜜ろうからキャンドルを作るなど商品についても想像を膨らませていきたいですね」と熱く語った。同プロジェクトは在住地域に関わらず、無農薬農業に理解のあるメンバーを募集している。
問合せ 小幡さん
TEL 0475・46・1132