追悼に代えて 山里 吾郎

 先月、久しぶりに市原市の中央図書館を訪ねた。開催中だった「遠山あき追悼展」に合わせ、急きょ企画された追悼上映会。「お元気だった先生の姿を、もう一度目と心に焼き付けておきたい」…そんな思いから▼昨年11月から始まった追悼展は、会期を延長するほど大きな反響を呼んだ。上映会も先生を慕う多くのファンの後押しで開催された▼80歳の時に自ら制作した「小湊鉄道物語」。養老渓谷に近い月崎駅から乗車する小柄で品の良い女性がナレータ―でインタビュアーでもある遠山あきさん。さらに「いちはらだより 房総の野に生きる」では鍬を手に「農業はひとつひとつの命を育てる。だから好きです。昔のタネがむくむくと芽を出して…」と楽しそうに語る▼昭和19年、戦災を逃れ夫の故郷、市原市田淵に移住。戦後になって農業に従事しながら執筆活動を開始する。53年に「雪あかり」で千葉文学賞、55年には「鷺谷」で農民文学賞。この間同人誌「槇」を発刊、地域文学の発信に意を注がれた▼親しいお付き合いは市原担当の記者になってからだから20年ちょっとか。最初は取材する側とされる側の出会い。すぐに気軽に声を掛けて頂くほど親しい交わりができたのも先生の隔てなく人を愛する気さくなお人柄からか▼人生の節目で時折お手紙を頂戴した。温かい文面が多かったが、時には厳しい叱咤も。まさに心を見透かされたかのような思いがした。本紙エッセイストの先駆けでもあった先生。3年前、一員に加えて頂いた時、「さすがですね」とお褒め言葉をしたためたお手紙を。お世辞と分かりながら心ときめいたのを思い出す。

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