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みんなでつくるがっこう
- 2016/5/27
- 市原版, シティライフ掲載記事
2年前に開催された『中房総国際芸術祭いちはらアート×ミックス』から、「遊・学・匠・食」のプロジェクトを展開してきた月出工舎(旧月出小学校)。藁ブロックに泥を塗り込んで仕上げた土壁と藁をむき出しにした壁はストローベイルと呼ばれる建築法。里山でとれた素材を使用している。今春、第2期のリノベーション(改修)工事を終え、5月3日から8日まで開催された『アートいちはら2016春』ではオープンハウスとしてお目見えした。
思い出のつまった古びた各教室はギャラリースペースのほか、天井に植物が描かれたレジデンスルームや和の趣のある木製カウンター付きのキッチンなどに変身。壁の一面がホワイトボードで作られたプロジェクトルームや作業場、シャワー室もある。「アートを展示するだけの場ではなく地域活性拠点となるものづくりの工房として機能させたい」とディレクターの岩間賢さん。みんなで何かを生み出すためにプロジェクトルームで計画を練る。月出工舎で寝泊まり、自炊しながら作業に勤しむ、といった感じだ。1階にある食品加工室を使い、食品をプロデュースすることもできる。パッケージのデザインは作家に依頼するのもひとつの手。また、新設された各部屋はサークルやグループの研修、合宿に利用することも可能。「つながること」をテーマに、全国各地から食や美術教育、貸民家といった様々なジャンルのプロを招いての勉強会も行ってきた。「多目的に使うことを想定している。作家だけが創り手となるのではなく、誰もが主役になる『みんなでつくるがっこう』を目指したい」と岩間さんは語る。リノベーションは、岩間さんを含む5人の作家と菜の花プレーヤーズが中心となり、壁や天井をはがすといった「減築」を基本に行われた。費用はかけないが、手間暇は大いにかけ「質は保つ。アートと同じです」と自信を見せる。
同校舎のエントランスには壁画家の鈴村敦夫さんによる、モザイクとステンドグラスがはめ込まれた巨大燻製機が、ギャラリースペースには小野耕石さんによる版画が展示された。赤、橙、黄、青…見る角度によって様々な表情を見せる版画作品を、来場者は一心にのぞきこんでいた。
市外から訪れていた女性は「シンプルモダンな感じのリノベーション、素敵です」と話した。来場者が夢中になっていたのは月出工舎に関する12問のクイズ。校舎内を奔走し問題を探して考える。全問正解したら、岩間さんと染織作家、岡博美さんデザインの缶バッジがもらえるというもの。間違えた人でも自分でデザインしたオリジナル缶バッジを作ることができ、家族連れにも大好評だった。