世界でも珍しい粘菌博物館が市原市東国吉に登場

20億年の歴史を持つ原生動物「粘菌」が地球を救う!?

 アメーバ状の体を移動させ、カビやバクテリアなどの微生物を捕食する動物的時期と、胞子により繁殖する植物的時期を持つ。水分がなくなると体が乾燥し休眠状態となるが、水をかけると再び復活する。そんな不思議な生き物、粘菌が庭先や山の中に生息していることをご存知だろうか。梅雨時に枯れ葉や枯れ木の裏側で見られることが多い。これらは変形菌と呼ばれる粘菌で、1つの細胞の中に無数の核をもち分裂と合体を繰り返しながら生きている。約400種類の変形菌が確認されているが、身近に生息するのは黄色のモジホコリ。環境に応じて体形を変えることにより、不死と考えられるほど長期の生命維持ができる。種としては約20億年もの時を生きてきた粘菌の存在と利用価値を広く知ってもらおうと、6月4日、市原市東国吉に『粘菌博物館』が開館した。立ち上げたのは『NPO知的コミュニケーション研究機関連合』。
 さらに面白い粘菌の特徴としては、ヒトの筋肉成分と同じタンパクを持ち、有害物質に対する感度はヒトの能力をはるかに超え、記憶、学習、意思決定もできるということ。帝京平成大学名誉教授、同連合理事長の加藤修一さんは約25年間、粘菌の研究を続けてきた。気温は25℃から30℃、湿度が100%の環境を最も好む。オートミールの粉末を餌に保水力のある特殊シートの上で培養を行っている。金属が溶けた水をシートに含ませると嫌がり、その場から逃げようとする。動く速度は1時間に約1ミリほど。そのほか粘菌が嫌うのは塩素や酸性度の強い環境だということが明らかになっている。このことから、汚染水・土壌や食品の安全性を測るセンサーの役割を果たすことができると加藤さんは考える。「人間は37兆個もの細胞を持っているから、ひとつの細胞がダメージを受けても全体にはさほど影響を及ぼさない。でも、単体細胞である粘菌にとっては致命的だからね」と加藤さん。不死に近いとはいえ、極端に劣悪な環境に置かれた場合は死滅してしまう。
 出どころが明確でない、各地で不安視される建設残土や白く見せるために塩素を使用している可能性のある食品。人体に有害な物質を含むものは周りにあふれている。「環境や健康が著しく悪化する前に、早期に発見できれば。粘菌を使う検査なら費用も安くすむし簡単。何よりも一目瞭然でわかりやすい」と太鼓判を押す。放射能物質の検知や、果ては医薬品開発など幅広い応用例が考えられるという。
 加藤さんは文部科学省主催の理科支援活動として、県下の小学校で5、6年生を対象に粘菌の観察授業を行ったことがある。400倍の顕微鏡で、動く粘菌を観察し大興奮だった児童たちからは「こんなに面白い生き物がいるなんて。自分でも調べてみたい」、「嫌いだった理科が好きになった」などの感想が聞かれた。「まずは興味を持ってもらい、環境問題と結びつけてもらえたら。小学生の夏休みの研究にもいいですよ。環境を変えるのではなく、環境に合わせて自らの体を変えていく。見習わなければいけませんね」と笑う。
 「東国吉には豊かな自然が存在する。近隣の『自然の森公園』で見られるゲンジボタルも環境のバロメーター。最近は土や水の汚染が気になりますがね。 自然の力を活かし、自然を守っていきたい。これからは菌の時代です」と館長の石井守さん。
 博物館内には、粘菌の種類や性質、応用例などを示した写真や資料などが展示されている。10年ほど前に採取され、乾燥した状態の標本も。こちらは乾燥状態が長すぎて水をかけても再生しないらしい。そのほか加藤さんのユーモラスな説明のもと、『自然の森公園』と粘菌工場で培養している粘菌をじっくりと観察することができる。生物が好きな方、環境保全に興味のある方、新しいもの好きな方、ぜひ足を運んでみてはいかが。小さくて素朴な博物館と公園。一見、地味に思える研究が地球の環境を救う手段のひとつとなるかもしれない。加藤さんは不在のときもあるので、お問い合わせを。所在地は東国吉495、石井商事建物奥。毎週土曜日10~17時開館。無料。
 また、同連合のメンバーも募集中。現在は約20名が加盟しており、新しい生物の可能性に夢をかけ環境を守るための活動に取り組んでいる。年会費5千円。

問合せ 石井さん
TEL 080・6738・3677

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