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VONDS(ボンズ)に新しい風 熱い情熱でチームをけん引
- 2016/8/5
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VONDS市原監督 ゼムノビッチ・ズドラブコさん
2015年春にオープンした、市原市喜多にある『ボンズグリーンパーク』。『市民クラブボンズ市原』の専用グラウンドだ。ネットの囲いのない天然芝と人工芝、2面のコートは開放感にあふれている。
「戻って戻って!」、「仲間がたくさんいるのに何で(パス回して攻めないの)!」ひときわ背が高く白髪混じり。コートの際に立ち、厳しい表情で選手にゲキを飛ばしているのは今年1月に同チームの監督に就任したゼムノビッチ・ズドラブコさん(61)。ユーゴスラビア(現・セルビア共和国)のクラブチームで17年間選手としてプレー、33歳の若さで監督業へと転向した。
初来日は1995年、2000年から2年間は『清水エスパルス』の監督を、2005年以降は千葉県サッカー協会テクニカルアドバイザーとして日本のサッカー界に貢献してきた。
『ボンズ市原』の監督を引き受けたのは「上向きで希望を感じさせるクラブだから」と明るく笑う。
『ボンズ市原』は2011年に誕生、千葉県社会人サッカーリーグ1部からスタートし現在は関東サッカーリーグ1部に参戦中。短期間で飛躍的な成長を見せている。前期の試合が終了し7勝2敗、得失点差+15と2位に差をつけて1位で折り返し。
チームがいい状態なのは「選手たちが同じ方向を向いている。ひとつ上のリーグを目指すという目標に向かって、気持ちをひとつに頑張っているから」と流暢な日本語で話す。試合に出場している選手だけではなく、ベンチの選手たちも声を出すことで一生懸命サポートにあたっている。「1人だけいいプレーしてもダメだからね。勝つにはみんなの力が必要。5月の前期最終戦、試合終了間際で10番の棚橋が決勝点をとったとき、ベンチも含めてみんなで抱き合って喜んだ。そういう気持ちが必要」
チームが目指している、ひとつ上のリーグとはJFL (日本フットボールリーグ)のこと。アマチュアチームにとって唯一の全国リーグ、最高峰のカテゴリーだ。その上にあるのはJ3、つまりJリーグ昇格への登竜門でもある。JFLへ昇格するには現在の関東サッカーリーグ1部で1位を獲得し、全国地域サッカーリーグ決勝大会(11月)で2位以内に入る必要がある。まだまだ道は険しいが「まずは目の前の目標をひとつ一つ超えていくこと」と冷静に前を見つめる。「超」は今年のチームスローガンでもある。外国人にとって難しいとされる漢字だが「『超』は深い意味を持つ素晴らしい言葉。相手を超える、目標を超える、そして自分を超える。簡単なことではないけれどね」と力をこめる。
選手に、ゼムノビッチさんの印象を尋ねてみた。「甘えが見えると厳しく指摘されます。ストレートに言ってくれるのでわかりやすい」とチームキャプテンの藤本修司選手(DF)。J2チームから昨年加入した21歳の二瓶(にへい)翼選手(MF)は「熱い情熱をぶつけてくる。ベンチでの存在感は大きく、一緒に戦ってくれている感じがすごくある」と話す。厳しくも愛情のこもった指導がうかがえる。
多くの選手は、ほかに仕事を持っている。火曜日を除く平日は午前中を練習に費やし、午後からはそれぞれの職場に出勤するというハードな毎日だ。夏を迎え、体力的に辛くなってくる時期。関東サッカーリーグ1部のほか、既に1次予選を通過している第96回天皇杯全日本サッカー選手権大会の次なるステージや10月から岩手県で行われる国体にも県代表として出場が決まっている。
「体力をつけ、ケガのないようにコンディションを整えていきたい。リーグ1位のチームに全力で相手が向かってくるのは必至。それに対応し首位をキープしないと。結果、内容ともにいい試合をすればファンも増える。ファンからエネルギーをもらって、さらにいいプレーができる。地元の人にマイチームとして親しまれるようなクラブになりたい。ぜひ応援しにきて」とゼムノビッチさん。
練習が終われば、日本と冗談が大好きな明るい性格のセルビア人。「日本人はみんなルールを守り良識がある。ゴミを捨てる人も少ないので公共の場がきれい。和食は味が繊細で奥深いしね。安心して暮らせる素晴らしい国。そうでなければこんなに長い間、日本にいないよ」と笑う。
毎回、試合には700人ほどの観客が訪れる。試合はもちろん、広々とした専用グラウンドでの練習も見応えがある。いつでも見学OK。『ボンズグリーンパーク』のクラブハウス内にはカフェが併設されている。運がよければお茶を飲みながら選手と会話ができるかも。練習や試合の日程はホームページを要チェック。「ボンズ市原」で検索可。