こだわりと思い入れが生むヤフオクで超人気のジオラマ

ジオラマ作家 長嶋淳一さん

 「情景模型」とも呼ばれるジオラマは、展示物とその周辺の環境・背景を立体的に表現したもの。箱の窓から中をのぞくと風景が広がっているように錯覚させる見世物として、19世紀初頭に発明された。その後、1915年にイギリスのバロック博物館が新たな展示手法として採用、日本においては1932年、東京科学博物館に初お目見えし、今や博物館の展示装置として欠かせないものとなっている。
 市原市在住の長嶋淳一さん(59)は、そんなジオラマの世界で全国に固定ファンを持つ作家。ヤフーオークションを中心に販売を行っており、出品すると即、長嶋作品を待っていたファンの間で競りが始まり、落札される。
 「こういうジオラマを作って欲しい、と電話で直接依頼されることもありますが、基本的にお断りしています。自分の作りたいものを作る。だからこそ気合が入るし、愛情や思い入れがつまった作品に仕上がり、それがクオリティにつながるのです」
 現在、『いちはらアート×ミックス2017』(4月8日5月14日開催)のPRツールとして、館山自動車道市原サービスエリアに展示中のジオラマ『小湊鉄道』は長嶋さんの手によるもの。イベント主催者から求められたものが自身の作りたいものと合致したことから引き受けた。
 「一面に広がる菜の花畑の再現は、模型人生で最も大変でした」。いかにリアルにいかに見栄え良くするかに徹底的にこだわり、材料や着色方法等々、連日試行錯誤を繰り返したからだ。「菜の花だけで、要した期間は半月余り。材料費もかなりになったし、市原市民としてボランティアみたいな気持ちで取り組みました」と笑う。
 生まれも育ちも市原市という長嶋さん。営んでいた印刷業の規模を縮小することとなり、4年程前「昔から好きだった」ジオラマを製作してヤフオクに出品したところ想像以上の価格で売れたことがきっかけで、『Risa工房』の名で本格的に事業化した。ちなみに、工房は娘さんの名前から命名。りささんは、女性らしい細やかさでジオラマのベンチなどのパーツ作成を時折お手伝い。「杉の木1本50円で請け負う」という仲良し親子だ。
 『小湊鉄道』に代表されるように、長嶋作品のメインは鉄道系ジオラマ(150分の1)。現地取材を行ったうえで製作する実在風景から始め、これまでに、独自の世界を表現する架空風景へと幅を広げている。材料は、アマゾンの他、百円ショップ、模型専門店と様々に巡り調達。輸入品も含め多種多様なものを購入し試すなかで、着色、汚しの入れ方、接着剤の入れ方などにも独自の手法を生み出し、作るたびにその質がアップしているという。
 最も多いサイズは、90センチ×45センチ。製作期間は早いもので1週間、大作で1カ月位となり、月平均2つを製作。長嶋さんの名前だけで、ヤフオクでは通常のジオラマより高値がつけられるというのはその質の高さを如実に物語っている。長嶋作品のコレクターからは、これまでに集めたジオラマをつなぐために段差と奥行を合わせた真ん中のジオラマを作って欲しいとのリクエストも寄せられるようになってきた。
 「とにかく楽しんで製作している」と長嶋さんは言う。「材料の調達から仕上げまで苦労と思ったことはない」というジオラマに対する愛情で、次なる目標として、兵庫県の餘部鉄橋を2mサイズで製作することを掲げている。

問合せ Risa工房
http://risa1163.web.fc2.com

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