鎌倉のメルヘン 山里吾郎

住みたい“と思うまちの一つが鎌倉だ。「頼朝伝説」「鎌倉道」を持ち出すまでもなく房総との縁が深い。個人的にも人との交わりで、忘れてはならない地になっている。一昨年、鎌倉の地に眠る友のことを書いた。今回は幼少期を過ごした長崎から繋がる人との縁で、北鎌倉を旅した▼長かった桜がようやく終わりかけた4月下旬、午前7時過ぎに五井駅から内房線直通の横須賀線に乗り込んだ。せわしげな通勤客を横目に、乗り換えなしの快適な車窓を眺めながら約2時間の旅程▼お目当ての『美術館開館までは少し時間があるな』と思いながら北鎌倉駅を降りると、すぐに円覚寺の山門が目に飛び込んできた。北条時宗が創建した臨済宗本山。今も「心の寺」と呼ばれる古刹をまずは拝観。そこから線路沿いに歩いて約10分、目的の「葉祥明美術館」はひっそり、樹木の中に佇んでいた▼葉さんは熊本市の出身。日本ばかりでなくイギリス、フランス、カナダなど世界で作品を発表している絵本作家。「隠れ家のような美術館が北鎌倉にあるよ」と聞き、「ぜひ訪ねたい」と以前から思っていた▼幼少期に過ごした長崎には家族同様に育った兄“がいる。3年前に訪ねた長崎で、葉さんがこの兄嫁の実弟であることを聞いた。「素敵な作品なの。一度見に行って」▼美術館ではちょうど「赤毛のアン」を題材にした原画展が開かれていた。抜けるような青空に緑と黄色の草原。小説の一こまをそのまま切り取ったように、どの色も淡く繊細、まさにメルヘンの世界だ。『また大好きな作家が1人増えたなぁ。今度はぜひ本人にお会いして…』。心からそう思った。

関連記事

今週の地域情報紙シティライフ

今週のシティライフ掲載記事

  1. 【写真】「手作りの電飾」木村順一  恒例の市原市写真連盟展が11/1(金)~6(水)、夢ホール(市原市更級・スポーツデポ市…
  2.  銚子市は、漁業と醤油の街として有名ですが、2012年に銚子市全域が日本ジオパーク委員会から「銚子ジオパーク」として認定されました。ジオパー…
  3. 【写真】真光寺仏殿(左)。右側は薬師堂が建つ前、本尊を安置していた書院  市原市との市境にある緑豊かな里山、袖ケ浦市川原井…
  4.  10/12(土)から12/15(日)まで開催される、市原歴史博物館(市原市能満)の特別展「旅するはにわ~房総の埴輪にみる地域間交流~」。千…
  5. 【写真】日展 彫刻 2023年  都内六本木の国立新美術館にて、11月1日(金)から24日(日)まで『第11回日展』が開催…
  6.  秋の里山では、山の幸クリの殻斗(いが)の棘が茶色く変わり始め目立つようになる。葉が覆い茂っている林では見分けにくい。花が咲く6月と殻斗が割…
  7. 【写真】Frederic Edward Weatherly『Peeps into Fairyland(妖精の国を覗き見る)』 …
  8. 【写真】お店の前で。『十五や』のTシャツを着た藤本さん(後列中央)と田頭さん(右隣)  緑豊かな市原市東国吉で、県道21号…
  9. シティライフ編集室では、公式Instagramを開設しています。 千葉県内、市原、茂原、東金、長生、夷隅等、中房総エリアを中心に長年地域に…

ピックアップ記事

  1. 【写真】真光寺仏殿(左)。右側は薬師堂が建つ前、本尊を安置していた書院  市原市との市境にある緑豊かな里山、袖ケ浦市川原井…

スタッフブログ

ページ上部へ戻る