8千曲以上作りました 世界的に活躍する作曲家・指揮者・シンセサイザー奏者

藤掛 廣幸さん

 「人間界にも自然界にも争い事やさまざまな問題があります。でも大きな生命の流れから見ると最も大切なものは愛というのがテーマです」と先ほど完成したばかりという曲について語るのは藤掛廣幸さん(68)。海外ではHiro Fujikakeの名で知られる。新曲は、世界最高峰のヴァイオリンであるストラディバリウスのための『スターコンチェルト』。10月に大阪で、ベルリン国立歌劇場管弦楽団のコンサートマスターである有希・マヌエラ・ヤンケさんのヴァイオリンソロ、藤掛さんの指揮で初演される。
 世界三大コンクールの一つ、ベルギーの『国際エリザベート王妃音楽コンクール』作曲部門において管弦楽作品『縄文譜』が日本人として初めてグランプリを受賞したのは27歳のとき。翌年、当時一世を風靡していたシンセサイザーを10台使い、名古屋でたった一人のオーケストラコンサートを開きNHKテレビで放映された。41歳でフルートの世界的トッププレイヤーであるサー・ジェームズ・ゴールウェイとの共演アルバム『妖精の森』が全米ビルボードで5カ月間ベス ト10入りを果たし、100万枚以上売れた。
 作曲コンクール、芸術文化奨励賞ほか各種受賞歴多数。壮大な交響曲からTV番組のテーマ曲まで、管弦楽、吹奏楽コンクール課題曲、オペラ、ミュージカル、マンドリン曲、校歌など作った曲は8千曲以上。指揮者やシンセサイザー奏者、音楽プロデューサーとしてジャンルを越えた多彩な活躍ぶりは書き切れない。
 毎夕、防災行政無線で流される時報、および市原市内のお祭りで踊られる『ハッピーいちはら』の作曲者と言えば、ピンとくる方も多いかもしれない。市原市桜台に住むようになったのは30代後半。住み慣れた岐阜県からロンドンに移り住んだあと、東京での仕事が多くなり、自然が多い場所にしようと考えて選んだ。仮住まいのつもりが、どこよりも長く住むことになったそうだ。「私は豊かな自然と静かな環境が無いと作曲出来ません。気に入っています」
 岐阜県東白川村生まれ。東西に清流が流れ、総面積の9割が山林という自然豊かな村で15歳までのびのびと育った。「岐阜県は海が無いので、海の水が塩辛いと確かめたのは中学の修学旅行でした」。卒業後は就職する予定だったが、成績優秀だったので高校進学を勧められた。「シューベルトと同じ誕生日だったからという非常に単純な理由で、音楽科のある高校に進み作曲家になろうと思いました」。音楽とは無縁だったので、図書館にあった『ピアノの弾き方』を借り、学校のピアノで猛練習。「入試でバイエルを何度も間違えて弾きましたが、学科の成績がトップだったため合格しました。中学校の先生は、本当に作曲家になるとは思わなかったでしょうね」。奥様との出会いは高校1年生のとき。23歳で結婚して以来「ずっと全力で協力してくれました」
 作曲は散歩をしながら行う。自宅から袖ケ浦公園まで歩いたり、養老渓谷に出かけたりして自然の中で湧き出てくる音楽をスケッチブックに書き留める。「歩くと良いアイデアが思い浮かびます。スケッチが出来上がるとスタジオに籠って作品を仕上げます。曲は想像力を駆使し精魂込めて作るため、体を壊したこともありました」。岐阜に住んでいた頃は「歩き回って作曲をしていると不審者と思われてよく職務質問されました。コンサートでこの話をすると面白がられるんですよ」と気さくに笑い、次々に楽しい話をする。趣味はテニス。ジーンズにTシャツ姿で「こんな感じです」と即興でピアノを弾いて見せるような親しみやすい人柄。
 一昨年は地元桜台の盆踊り『オッサ節』を作った。市川市の団体から同市に残る、万葉集にも謡われた伝説を題材に作曲をと依頼され、『手児奈ファンタジー』を作り、今年5月に自ら指揮をして初演した。市原市のサークル『マンドリーノ・コスモス』からも『ハッピーいちはら』の編曲を頼まれている。「今までは多忙のため、基本的に地元の仕事は断ってきましたが、そろそろ貢献したいと思うようになりました。いつか市原市でも気楽なコンサートを開きたいですね。県外での学校コンサートなどは100回を超しました。毎回大好評ですよ」
 かつて編曲を手掛けたイ・ムジチ合奏団のアルバム 『浜辺の歌|日本の四季』は評判が高く、今年、『クラシック銘盤ベスト1200』としてユニバーサルミュージックから再発売された。

問合せ 藤掛さんHP
http://www.muse-factory.com/Japanese/JapaneseTop.html
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