救える命は、すぐ側にある 保護犬・保護猫の存在を知って

 1月13日(土)、千葉県文化会館で開催されたのは千葉県健康福祉部衛生指導課主宰の『保護犬、保護猫を飼う』セミナー。会場には約150人が傍聴に訪れ、第1部の講演、第2部のパネルディスカッションが2時間半余り行われた。
 まず、同衛生指導課より飯田直樹さんが講師として『千葉県における譲渡の取組』について解説。「譲渡対象となるのは、負傷している所を保護したか、飼い主が飼えなくなったか。迷子の子たちは飼い主を発見次第返還しています。その中で、攻撃性が激しい子や重い病気を持っていて譲渡が不可能だと殺処分の対象となってしまいます」と話す。
 だが、30年前には県内でおよそ3万5千頭の犬猫が殺処分されていたものの、2007年に譲渡推進の活動が活発化し登録ボランティアができたことで、昨年度の殺処分数は1100頭まで減っている。それでも、「長期保護の子がいると、スペースが足りず処分対象に繋がること。保護中のストレスをどう軽減してあげるか。譲渡後に各家庭で安らいでもらうため、何を伝えるべきかなど課題は多いです」と飯田さんは続けた。現在は動物愛護センター本所(富里市)で毎月1~2回(木曜・日曜)、東葛飾支所(柏市)で毎月1回(金曜・土曜)と譲渡会が開催され、平成28年度には一般家庭に計268頭の犬猫が譲渡された。
 次に、帝京科学大学生命環境部の准教授である加隈良枝さんが、『譲渡と動物福祉』について講演した。動物福祉とは、人間が主体となって動物を可愛がるという考えとは異なり、動物が肉体的・精神的に幸福かという概念である。それに基づき、譲渡する側と譲渡される側の双方が気を付ける点があるという。「特に保護中の動物のストレスの軽減が必要です。多頭飼育を避け、感染症の予防に努め、衛生状態の管理に目を配ります。また、同じ環境にいるからといって行動特性は個体で違うので、猫のストレス状態を測るスコアなどを参考にするといいでしょう」と加隈さん。
 人間同様、犬猫の行動にも理由はある。譲り受ける側も、どうして彼らがそんな行動をとったのかを知ることで、適切なマッチングが可能となる。『ひとめぼれした』、『初めて飼うけど、ちょっと子犬が欲しかった』などの気持ちで、一つの命を簡単に引き受けていいのだろうか。
 そして最後に、株式会社ミグノンプラン代表取締役の友森玲子さんによる『保護動物が家族になる』という実際行われている保護活動について語られた。2007年に初めて東京都譲渡団体登録をした友森さんは、2011年に東金市でシェルターを開設。その後都内へ移設したが、年間250頭の保護動物の受け入れを行っている。また、東日本大震災や熊本地震の際には各々100頭以上の犬猫保護に尽力した。「弊社では譲渡の際に家族構成を聞き、自宅も拝見して、2週間のトライアルも済ませてから決定しています。フルタイムで働き、お留守番の時間が長くなる場合はお断りすることもあります。可哀想だから貰う、じゃダメなんです。人の子どもと同じ、とまでは言いませんが、きちんと向き合う覚悟をもって欲しいです」と友森さんは訴える。 また、可愛いからと子犬や子猫を希望する人も多い。だが、餌の回数やトイレトレーニング、体調の急激な変化にも対応しなければならない。「みなさん、成猫や成犬の飼いやすさを知ってください。すでに大きさも決まっていて、落ち着いています。もし病歴などがある場合は譲渡する側が必ず全てを伝え、納得の上で飼うことにより『こんなはずじゃなかった』は減らせます」と声を大にした。
 第2部のパネルディスカッションでは、実際に愛護センターより7歳の雌犬を譲渡された女性が、「高齢の母と2人暮らしで、初めから成犬を求めていました。先住犬との相性も良く、2年近くなって自分から喜んで私達に寄ってくるようになりました。今も薬を飲ませていますが、飼いやすく、本当にオススメです」と体験談を語った。
 県動物愛護センターでは、ホームページで飼い主募集中の犬猫の性格や写真を掲載するほか、youtubeやfacebookで動画も配信中だ。ペットを飼う選択肢として、保護犬や保護猫を考えてみてはいかがだろうか。

問合せ 県衛生指導課  
TEL 043・223・2642

問合せ 動物愛護センター 
TEL 0476・93・5711

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