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家族であり友達のようなヴァイオリンをこよなく愛す
- 2018/6/15
- シティライフ掲載記事, 市原版

ヴァイオリニスト 釣井 智子さん
市原市在住の釣井智子さん(38)が奏でるヴァイオリンは軽やかに、そして彼女の性格を表すように穏やかな音を出す。3歳から始めたヴァイオリン。途中受験勉強で1年ほど休む期間はあったものの、ここまで長く続けてこられたのはなぜだろうか。
「きっかけは母の勧めです。母自身が、昔習いたかったけど出来なかったみたいで、代わりに私に習わせてくれました。最初の記憶もないほどですが、ピアノや習字、バレエなど様々な習いごとをした中で一番楽しかったですね」と話す釣井さん。
講師の指導は常に熱が入っていて、その厳しさに涙を流すことも少なからずあったという。辞めたいと心の隅で思っても、気づけばまたヴァイオリンを手にする。そして成長とともに、何か辛いことがあった時に側にいてくれる存在へと変化していった。「なにより、うまく弾けた時に褒めてもらうのが嬉しかったんですね」と、彼女は物静かな笑顔を見せる。
ヴェートーベンとチャイコフスキーが作曲した音楽が大好きで、ピアノとバレエを習ったことがクラシックの知識をより深めてくれた。音楽センスに優れ、一見大人しい印象を受ける彼女だが、小中学校時代にはバスケットボール部所属という溌剌さも兼ね備えている。並行して、小学5年生から始めたのが市原フィルハーモニー管弦楽団だ。「楽団は創立して今年で26年になります。創立当初のメンバーに近所の方がいて、誘ってくれたんです。小学生は当時私一人で、大人の中で緊張していたんだと思います。今でも、あの時は音が小さかったよねって笑い話!」になっているとか。現在、同楽団で釣井さんが務めるのは『コンサート・ミストレス』。オーケストラ全体を引っ張るまとめ役で、指揮者と演奏者の間を取り持つ重要なポジションだ。楽団には釣井さんの他にもう1人コンサート・ミストレスがいて、一緒に仲間との演奏を盛り上げているという。
音楽は癒しを運ぶ
また、ヴァイオリンがもたらした転機がある。「夫とは楽団で出会い結婚しました。新婚旅行は音楽の都、ウィーン。本場の音が聴ける演奏会に日程を合わせて行くのも、私達ならでは。日常生活の中で、音楽の話をすることも多いですね」と、幸せそうだ。4歳の長男も両親の影響で生まれた時から音楽と共に生活してきた。最近では子ども用のヴァイオリンに触れては音を出したり、コンサートを聴きにきてくれたりするという。「将来的に、親子で演奏できたら楽しそう!」と夢は膨らむ。
ただ、「今は幼稚園に行っている間に練習できますが、学年が上がってくるにつれて子どもにかかる時間も増えていくかもしれません。練習時間の確保が課題です」というのも、同楽団の他、釣井さんは都内で定期演奏会を行っている『弥生室内管弦楽団』や市原フィルハーモニーから派生して結成した四重奏団『ハート・キャッチ』、プロの演奏家も集る『コバケンとその仲間たちオーケストラ』に所属。ロビーコンサートや公民館での出前コンサートなど、クラシック音楽の普及に尽力しているのだ。
それぞれの演奏会に出演すると、1年に3回は舞台の本番を迎えることになる。「もちろん、家庭と両立できる範囲で活動しています。でも、時々中途半端になっているのではと悩むこともあるんです。そんな時、いつも楽団の仲間たちに励まし、支えてもらっています」と感謝を口にする。特に、コンサート・ミストレスの立場は、自分だけがうまく弾ければいい訳ではない。周囲に気を配り、演奏に悩んでいる人には積極的に声をかける。長年かけて作り上げた楽団の雰囲気が、釣井さんの背中を後押しする。
「音楽は癒されますし、演奏を聞いて涙が出るなど感情が動くことが嬉しいですね。なによりヴァイオリンの良さは、自分の音しか出ない。おさえる場所によって音が変わるため、指の感覚が少しずれると音がはずれます。そこが難しさであり、楽しさ」と語った。年齢や季節問わず楽しめるクラシック音楽は、趣味を見つけたいという方にとっても身近な一品かも。
市原フィルハーモニー管弦楽団は11月18日、市原市民会館で定期演奏会を開催予定。他詳細は問合せを。
問合せ 釣井さん
tomo19tomo80@yahoo.co.jp