気持ちをこめて糸をつむぐ

 毎週水曜日に袖ケ浦市郷土博物館で活動している『機織の会』。メンバーは6名の女性で、うち5名が市内在住。会の発足から2年が過ぎた。きっかけは同博物館の館長である井口崇さんが提案した機織り体験だった。「平成3年に博物館の屋外施設として開設された万葉植物館では少量ですが綿の栽培をしています。博物館というかつての歴史を伝える場所で、機織りという伝統技術を楽しんでもらえると嬉しいです」と話す井口さん。
 体験したメンバーが興味を持ち、サークルを立ち上げた。「木更津市で活動している機織りサークルさんは技術も高く、その体験でも丁寧に指導してくれました。私達はまだ数えるほどしか作品はできていませんが、一生のうちに気にいった物を作れるようになりたいです」と話すのは、メンバーの石井英美さん。
 サークル内で一番の経験者である勝容子さんは、「今でこそ機織りは珍しいものになりましたが、明治までは日本人は着物で過ごしていたので、一家に一台機織り機がありました。家族の衣類は自分たちで揃えていましたから。東北や九州は目立った産業がなかったため、特に発展したと考えられます」と言い、メンバーからは「歴史の勉強もできるんです」という声が上がる。 一概に機織りといっても、工程は長い。綿を育て、繊維を取り出し、紡いで糸にする。糸を染め、デザインで構図を決めてから機織りをして、やっと布ができる。「人によってどの工程が好きか異なります。みんな何がやりたいのか、探っている最中です」と、勝さん。
 メンバーでは、「ふわっとするので手紡ぎの糸が好きです」、「草木染めをしたのが楽しかったなぁ」など、確かに各々好みがあるようだ。取材日の活動では、染めた5mの糸を綺麗にほぐすことに熱中。卓上機で足ふきマットや子どものベストを作ったり、機織り機を使って6名で交互に織り、半年かけて数mに及ぶピンク色の布を織りあげてきた。
 「今度はみんなで機織り機にかけるところからやってみようという話になったんです。糸は繊細なので扱うのが大変です」と、なかなか思い通りにはいかないようだ。だが、それも機織りの魅力でもあるのかも。「手がもう一本あったらいいのに!」と笑いながら糸をほどく仕草は楽しそうだ。
 普段から、機織りに関することやそれ以外のこともおしゃべりしながら続けているという同会のメンバー。「私生活でもテレビや映画で機織りに関することをやっていると目に付くようになりました」と続ける。同会では、機織りに関する情報、自宅に眠っている使わなくなった機織りの道具や部品を募集している。道具や部品については壊れていてもOKとのこと。また、一緒に活動できるメンバーも常時受け付けている。詳細は問合せを。

問合せ 袖ケ浦市郷土博物館
TEL 0438・63・0812

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