【市原市】古き良きを守り、 同じ時代に生きる人々よ集え

宝林寺住職 千葉公慈さん

 2月3日(日)、市原市立南総公民館で行われた『生き活き大学公開講座』。講師の駒沢女子大学の教授で、市内宝林寺の住職である千葉公慈さんが『小湊鐵道の逆開発から考える未来予想図 私たちが伝えたいもの』を副題に、日々の生活の中でいかに幸せを見つけられるか、市原市の重要な文化財の1つである小湊鐵道と仏教の教えを融合させながら説いた。「千葉県は成田空港もあり、世界の玄関口ともいえる県です。そして市原市は世界に誇る最先端技術をもつ工場が多く、一方で長閑な田園風景も広がっています。私は五井駅から続く小湊鐵道を常にタイムマシンだと思っています。都市部から離れるに連れて、まるで時代を遡っているような感覚を味あわせてくれるからです」と千葉さんは初めに話す。
 小湊鐵道株式会社が提唱する『逆開発』。開発をして新しい土地や未来を切り開いていこうとする考えの逆を示すこの造語はつまり、古い物の中から素晴らしい存在を見つけていこうという意味で使われている。鉄道の線路の構成部材である枕木は、現代の鉄道業界ではコンクリートが使用されているが、小湊鐵道には本当の木材が使用されている。また、昭和30年代に造られた車両が現役で走り続けていることにも、千葉さんは驚きと興奮を隠さない。「60年近く前の車両は、博物館に並んでいてもいいレベルです。線路や車両を守り安全管理を維持する熱意は本当に凄いし、その車両がイノシシやシカのいる自然に向かって走っていくコラボレーションがまさに特殊で貴重な文化なんです」と、千葉さんは熱く語り、「そして逆開発は、仏教の『開発(かいほつ)』という言葉に繋がります。『開発(かいはつ)』は、みなさん新しい意味を生み出すという意味で使っていると思いますが、本来は、元々ある素晴らしいものに気づく、悟りの心、という意味なんです」と続ける。
 言葉は数百年以上引き継がれている間に、まるで反対の意味で使われるようになることは珍しくない。たとえば、『うやむや』はどうだろう。本来は『有りか無しかはっきりさせる』という意味だが、『曖昧にしてしまう』という意味で使用していないだろうか。『無学』も同様で、現代では『学の無い人』として用いられるが、本来は『学ぶ必要が無いほど知識に溢れている人』という意味なのだ。千葉さんは、「チバニアンや南総里見八犬伝、儒学者である日高誠實が暮らした梅ケ瀬など日本を代表する文化や歴史が身近にあることに気づき、その素晴らしさに感謝しましょう」と促す。桜や紅葉の名所、温泉、美術館。市原市内にはイベントが定期的に開催されている名所も多くあるが、自分しか知らない秘密の素敵スポットを探して見るのも楽しいのではないだろうか。「人間は男女関係なく共通して悟りの心を持っています。せっかくの心が花開くことなく人生を終えてしまってはいけません。心が目覚めると仏になれます。仏を表す仏陀(ぶっだ)という言葉も、目覚めた人や気付いた人という意味があるんです」と、説明した。

繁栄に必要なもの

 また仏教には、『七不衰法(しちふすいほう)』の教えがある。これはブッダが亡くなった時の記録として『マハー・パリニッバーナ・スッタンタ』に収められている。今から2500年前のインドで、80歳を迎えたブッダは新たな旅に出る。旅では虫一匹殺さぬように歩く。そこへ小国ヴァッジ族の遣いが現れ、隣国で大国のマガダ王国に滅ぼされそうになっていることへの対応策を求められた。ブッダは弟子を通して、なぜヴァッジ族が小国ながらに繁栄して、滅びないのかを説いたという。「これこそ人間が永久に滅びない7つのダルマ、『七不衰法』です。多くの住民が参集してしばしば会議をすること。協力して決議通りに行動すること。風習を守ること。年長者を敬うこと。女性や子どもに決して手をあげないこと。社会が守ってきた聖域の社や祠を敬うこと。道を学ぶ修行者たちを尊敬し、彼らを守り、学ぶ者たちはよく集まること。これは永久に栄えるテーマであり、私達が住む市原はすべて満たされていることに気づいてください」と、千葉さんは声を大にする。  
 文明は発展しているにも関わらず、現代で起こるニュースには女性や子どもが被害になっていることは少なくない。2500年も前にすでに人権や福祉の重要さはブッダから人々に教えられており、最も重要なことでもあったのだ。千葉さんはその後、『七不衰法』の裏返しとされるマハトマ・ガンジーの『七つの大罪』を紹介。イギリスからの独立運動を指揮したガンジーは非暴力と不服従を訴え、成功。同じ方式で世界中が独立運動を起こしたという立役者だ。「大きなことから始める必要はありません。お互いに感謝の心を持って、日々生活していく中で教えを学ぶことが大切なのです」と最後に話した。

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