幾千もの紙片を盛って創る緻密な美の世界 星かづを 和紙絵展 開催【市原市】

ここに踏み込んでいいのだろうか…と足が止まってしまうほど美しい場所に着いた。市原市島野在住の和紙絵作家、星かづをさん宅の玄関には、宵闇色のタイルに美しい和紙の花が浮かび上がり、和柄の羽を持つ蝶が舞っている。作品の1つ『宵の舞』が、靴を置く土間の部分に再現されていて、訪れる人の目を楽しませる。
 星さんが初めて和紙絵の世界に魅せられたのは27歳頃のこと。「テレビで和紙絵を創っている場面を見たんです。一般的に和紙絵といえば、多色の和紙をちぎって貼り付けていく『ちぎり絵』を指すことが多いですが、その時の創り方は、和紙を立体的に盛っているような感じでした。あれ?これは見たこともないし聞いたこともない。この手法を自分なりにアレンジして、いつか独自の作品を創ってみたい!と思いました」と振り返る。
しかし、その後は音楽活動に携わる日々を送る。作詞、作曲、歌唱を行い、地域のコンサートにも出演、レコード化の話も出たが、45歳の時、和紙絵の制作を始める。およそ18年の時を経ても描いた夢は消えなかった。陸上競技も得意で、様々な分野で子どもたちの指導ができた星さんは、36年間、児童養護施設の施設長としても働いていた。勤務を終えた深夜の作品作りは、失敗を重ねながら日々少しずつ続けられた。
「1つの作品を作ると、次はもっと違ったイメージで作ろうと、どんどん膨らんでいくんですよね。それを活かすためにメモを取るんです。そのメモの集合体によって次の作品ができあがります。そんな繰り返しと積み重ねで、手法のレパートリーも広がりました」と話す星さん。和紙の魅力を尋ねると「和紙には、他の紙にはあまり無い温かみがあります。手触りも柔らかく、触れていると気持ちが落ち着きます。作品ができあがった時、油絵や水彩画とはまた違った完成度というものがあります」と話す。
 手法の異なる3つの作品を拝見した。1つめは、和紙をミキサーで砕いて、配合の割合を微妙に変えながら赤のグラデーションを出し、紙片を盛り重ねて創られた『福海老』。ホッコリ優しくて、触れたくなるような立体感が素晴らしい。様々な『赤色』の鑑賞もできる。2つめは、極薄紙を幾重にも重ね陰影を出している『ふくろうの森』。あちらこちらにいる300近いふくろうたちが、皆違う表情をしているそうだ。笑っていたり眠っていたり、ウィンクしているものもいて楽しく夢のある世界だ。3つめは、ミリ単位の極小の短冊がいったいどれぐらい使われているのか、全ての柄を鑑賞したくなる『オーロラへの旅』。いつか気球に乗ってオーロラを観に行きたいという星さんの夢が込められた力作だ。気球の模様に圧倒される。「奥様との夢旅行ですか?」の問いには、否定せず「ははは」と照れ笑いを返した。

支える夫人の思い

 和紙絵展は予約不要。当日誰でも入場できる。色紙サイズから畳半畳ほどの大きさのものまで、約25点が展示される。記事で紹介した3作品ももちろん出展される。屋外では、はがき、ブローチ、Tシャツなど小物の販売もある。作品を熟知していて丁寧に説明してくれる鏡子夫人は「男性が創っていること、和紙であることを伝えると、本当か?と、よく驚かれます。主人は和紙のぬくもりを感じてほしいと作成しております。たくさんの人にお越しいただけたら嬉しいです」と話す。星さんがNHKラジオの1時間番組で特集されたことも、星さんの指導を受けた子どもたちが活躍していることも教えてくれた。
今年金婚式を迎える仲睦まじい夫妻の愛息子は、犬のチェリー君。3代目とのこと。家にあがった時に飛びついて歓迎され、一緒に撮影を済ませると静かに他の部屋に行ってしまった。「これで自分は参加した、と思っているんです」と愛おしげに笑う鏡子夫人。チェリー君の賢さと可愛らしさにビックリだ。先代のチェリー君も和紙絵になって個展に参加する。
星さんに、今後の抱負を尋ねると「健康をきちんと管理して、自分が創りたいなと思ったものを時間をかけてゆっくり創ろうと思っています。もちろん今まで創ったことのないような作品を考えています」と瞳を輝かせる。どのような作品かヒントをねだると「それは内緒です」と笑った後で、「綺麗な色を創りたいですね。綺麗な色で今まであまり見たことない作品を創りたいです」と、『綺麗』の言葉に力を込めて繰り返した。今回の個展の案内はがきに描かれ、出展も予定されている『ステンドグラス調「桜」』も、目を見張るほど素晴らしい。緻密で美しい和紙の世界にぜひ、お出かけを!
◇9月14日(土)・15日(日) 10時~17時 市原市上総更級公園・公園センター 入場無料
問合せ:星さん
TEL.0436・21・2645

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