- Home
- 市原版, シティライフ掲載記事
- 伝統のフランス菓子を伝えたい パティスリー・ル・エリソン 小嶋重光さん【市原市】
伝統のフランス菓子を伝えたい パティスリー・ル・エリソン 小嶋重光さん【市原市】
- 2020/3/12
- 市原版, シティライフ掲載記事
市原市今津朝山の住宅街、鮮やかなフランス国旗が目印のパティスリー・ル・エリソン。2011年にオープンした、フランス伝統菓子にこだわる菓子店だ。代表取締役・小嶋重光さん(43)は、「味だけでなくお店も、ひと昔前のフランスの地方のパティスリーのような、懐の深い雰囲気を目指しています」と話す。
小嶋さんは市内土宇出身。子どもの頃から料理も食べることも好きだったが、生の肉や魚、和菓子の餡が苦手だった。「だから苦手のものが一切ないケーキが大好きで、ケーキ屋さんになるのが夢でした」。実家が車の鈑金店のため工業高校を卒業したものの、「鉄を触るのは好きになれなかった」と欧州菓子専門学校へ。ここで、ショコラに酸味のあるコンフィチュール(フランスのジャム)を組合せるなど、25年前の日本では、地域の普通の菓子店にはないフランス菓子と出会い、虜になった。フランスの製菓学校にも留学、ノルマンディーの菓子店『パティスリー・ブディウ』で修行し、フランス各地で受け継がれてきた郷土菓子に魅了されたという。
「ノルマンディー地方はリンゴの産地。秋冬はリンゴの菓子が多く、仕入れれば栗もありますが、地元の味はリンゴなので、栗の菓子は作らない。逆に同じノルマンディーの菓子店でも、シェフの実家がボルドーだと、ボルドーの郷土菓子がメイン。同じ名前の菓子でも、うちの店とは形や味わいが違ったり。慣れ親しんだ味を守るんですね。しかも、当時のフランスの町の菓子店では、材料からすべて手作り。朝早くからアーモンドを選別し粉にしていましたし、兎や鹿などジビエ肉のお惣菜も作るので、肉をさばいたりパテを作ったり。アイスクリームのコーンも焼きました。本当に手作りの、シンプルだけど味わいの深い菓子ばかりだったんです」。今の日本もフランスも、製菓材料を仕入れて作ることが普通になり、昔のスタイルは少なくなった。だからこそ、時間も手間もかかるが伝統の味を伝えるために、小嶋さん夫妻を中心に、やれる限りはこだわっていきたい、と言う。
数多いエリソンのメニューで、小嶋さんの一番好きな菓子は『ピュイ・ダムール』。パイ生地にフランボワーズのフレッシュとコンフィチュール、カスタードをベースにイタリアンメレンゲを入れ発酵させた甘酸っぱい特製クリームを重ね、焼きごてで焦げ目をつけている。「とろけるクリームにザクザクした生地の歯触り。味わいもキャラメリゼの苦み、クリームの甘さ、フランボワーズの酸味と、様々なものが詰まっています。ノルマンディーの友人の菓子店のもので、最初に食べたとき、その美味しさにこれぞフランス菓子だ!と思ったんです」。
フランス菓子は様々な国や地域のものがミックスされ、進化してきたという。モンブランやマカロンはイタリアから、クグロフはオーストリアからで、どれも元の菓子は違っている。日本に来たマカロンはパリ風、フランス各地では形やクリーム入りかどうかも違うそうだ。「材料は同じでも、配合と調理法が変われば、形も食感も味わいも、まるきり違うものができるのが菓子。完成形となったのが今の定番菓子や地域の伝統菓子ですが、いざ作ると、菓子職人によって個性の違いが出、同じものとはならない。それが手仕事の素晴らしさだと思います」。
小嶋さんが参加する『クラブ・ドゥ・ガレット・デ・ロワ』は、フランス伝統菓子を作るパティシェが集まり、その味を広める活動をしている。千葉県内では小嶋さん含め2名がおり、毎年、新年を祝うガレット・デ・ロワを各パティシェが作り、フランス大使館に進呈するそうだ。「菓子は絶対に食べなくてはならないものとは違いますが、その分、見て食べて幸せになる、心の栄養のような役割があると思います。フランスで長年伝えられ、愛されてきた味を知って頂きたいので、これからもフランスならではの伝統菓子を作っていきます」と小嶋さんは言った。
(問)パティスリー・ル・エリソン
Tel&Fax.0436-63-3398
市原市今津朝山988-7
営業:10時~19時
休日:㈭と不定休
https://www.le-herisson.jp/