ただひたむきに筆を走らせる想い 画家 大森良三さん【大網白里市】

 大網白里市在住の大森良三さんが長年描いてきた作品を飾る小さな美術館が昨年9月、同市ながた野にオープンした。そこは私設『よこい美術館』。永田駅から徒歩数分の場所にある、綺麗なみどり色の外観が可愛らしい同館では、ドアを開けるとすぐにパリの風景が出迎えてくれる。「私は30代前半に、画家として一本でやっていこうとサラリーマンを辞めました。高校を卒業してから、横浜市にあるヨシ・アートゼミで絵を学んでいたんですが、師事していたフォービズム(野獣派)の巨匠、故里見勝蔵先生の勧めで、毎年数カ月パリに滞在して絵を描くようになりました」と、微笑む大森さん。異国情緒溢れる十数枚の絵には町並みや店先の風情、読書をする人や楽器を吹く人が描かれ、今にも匂いや音、人々の会話が耳に届いてきそうな錯覚に襲われる。

パリの街をご覧あれ

 岩手県久慈市に生まれた大森さんは、子どもの頃から絵を描くことが得意だった。「特に習った訳でも、親戚に画家がいた訳でもない」というが、「音楽室から見える学校の裏山を描いていた時に、先生に褒められて画家という職業を勧められた。その時から、私の夢は画家になったんですね」と話すほど、早い段階で才能は顕著に現れていたのだ。「彼のお母さんも、才能を大切にされていたそうです。実家の部屋の小さなスペースは、チョークでどれだけ絵を描いても良かったとか。学校で描いた絵のほとんどを家に飾り、晩年は賃貸物件として他人に貸していましたが絵はそのままだった」、と話すのは、大森さんを公私で支える妻の京(きょう)さんだ。横浜市のアートゼミ時代に知り合い、誰よりも大森さんの才能を認め、愛してきた。「彼は今も少年のよう。純粋で打算もなく、絵に対する姿勢もまっすぐで出会った頃と変わらないです。母性をくすぐられますね」と、京さんは続けた。
 内閣総理大臣賞、国際芸術文化賞、ル・サロン(仏)の入選など国内外を問わない受賞歴をもち、2007年および2017年にはパリの市庁舎などで企画展も開催している。パリに渡ること42回の大森さんが描くパリは、どうしてそんなにも国を越えて愛されているのだろうか。もちろん、年齢を経るにつれて水彩画も油絵においても、作風は変化している。
しかし、「人間の匂いがするような画を描きたい。人物や風景を感じる心、見たままに表現する。難しく考えないこと。筆を走らせないと始まらないですから」という気持ちは変わらない。詩人アポリネールが残したパリ『ミラボー橋』を読んで「どんなにか素敵な橋かと思った」そうだが、しかし、行ってみればそこはなんの変哲もない橋。「パリは石造り文化の歴史が根付く土地。みんなが歩き、石はすり減っていく。建築物を守りながら、店先も生まれ変わっていきます。『ミラボー橋』の詩のように、触れた人の心を躍らせる、絵もそんな風にして残せるのでは、と思った」という大森さんと京さんからは、二人でパリに滞在した時のエピソードが次々と紡がれ、話題は尽きなかった。

絵で繋がれた出会い

 5年ほど前、とあるイベントで大森さん夫妻は、今回同館を開設した大網白里市在住の館長 横井陽一さんと友子さん夫妻に出会った。絵画への関心が深い横井さんは、「大森先生は、先人の画家が絵にしてきたものとは異なるパリの街と、そこに生活する市民を繊細に生き生きと明るく描き、ご自身の作風を確立されている。そして、絶えず新鮮な眼で色付けを直されている」と笑顔を見せ、館内の絵をじっくりと見て回りながら解説をしてくれる。横井さんは、プロアマ問わず画家との交流および鑑賞を推奨する団体『アートフレンドの会』を設立。大網白里市内の美術を大切にする空気の盛り上がりを願い活動中だ。同会は現在、会員を募集中(年会費千円)。

(前列左から)横井さん、大森さん、京さん、(後列)友子さん

 昨年は新型コロナ感染症の流行でパリに行くことができなかった大森さん。しかし、7月と11月の2回、郷里・岩手県久慈市に寄贈した大作が市役所正面玄関に大きく掲げることになり、除幕式に招かれた。7月には京さんの運転で片道10時間以上かけて往復したとか。また、同市の文化功労者に選出され、今年2月7日には表彰式が行われる予定だ。「絵は見た人に自由に感じ取ってもらえればいい。私の作品がどこかで大事にしてもらえていれば、ホッとします。コロナ禍の今だからこそ、これからは日本の風景を残していけたら」と、大森さんは優しく話した。

問合せ:よこい美術館
大網白里市ながた野2の3の18
入場料200円 予約制
Tel.080・5197・6823

 

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